第五章
第49話 出発
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うとした。
だが、例によってベッタリ抱き付かれていたので、解く際に気づかれてしまったようだ。ムニャムニャ言って上半身を起こしてきたので、まだ寝ていろとベッドに倒した。
タケルは床に敷いたマットの上で寝ている。
起こさないようにそっと足を運んでいたつもりだったが、やはり気がついたのか、小声で「おはようございます……」と挨拶してきた。
俺は「おはよう」と返してから、カイルと同じくまだ寝ているよう告げ、部屋から出た。
入口近くでペタンと寝ているクロには、こちらから朝の挨拶をしておいた。
きっと、寝ておけと言ったところで拒否して付いてくるだろうから。
クロと一緒に、城の廊下を歩く。
外はよい天気のようだ。一定間隔にある窓からは、朝の若い光が差し込んできている。
立ち止まり、窓から外を見ながら、伸びをするようにストレッチをした。
兵士も当番以外はまだ寝ている時間だが、一人の足音が近づいてきた。
顔だけをそちらに向けると、銀髪長身の男性。神だった。
神は近くまで来ると声をかけてきた。
「ずいぶんと早起きなのだな」
俺は体も回転させ、神のほうに向き直った。
「おはようございます。あなたも早いですね」
「おはよう。わたしはもともと『夜だから寝る』という習慣はない。この体を使うようになってから、眠くなるようにはなったが。まだ朝は早く起きてしまうようだ」
「へえ」
これは初耳だった。
こちらから聞くとはぐらかすわりには、意外と自分からボロを出すことが多い。
それらの発言をきちんと拾ってまとめれば、神の仕様に関するそれなりの設定資料集ができそうだと思う。
――そうだ。
今は俺とクロしかいない状況だ。せっかくなので聞いておこう。
「こちらに降りてきて、もう一か月近くになると思いますが。どうですか? 初めて経験するこちらの世界は。人間を間近に観察して、何か思うことはありますか」
俺の質問を聞くと、神は腕を組み、窓の外のほうを見て考え込んだ。
そこまで真剣に聞いた質問ではないので、別に一生懸命考えてくれる必要はなかった。しかし、見ると意外にシリアスな雰囲気だったので、俺はその姿を見守った。
組んだ腕を解くと、神はこちらを見て、言った。
「なかなかよい」
限りなくシンプルな回答が返ってきた。
「それじゃわかりませんよ」
俺がそう言って少し笑うと、神は「そうか」と、また少し考える素振りを見せる。
「毎日いろいろな人間がわたしのところに来ているが、人間と話をするのは楽しいと感じる。そして観察していても退屈しない」
「人間が気に入ったということでしょうかね」
「そういうことになるな。その性急さを含め、気に
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