第五章
第49話 出発
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茶屋で捕縛した地下都市関係者への説得は、無事に成功した。
彼らはこの国と地下都市とのパイプ役を務めてくれた。めでたく、両首脳の話し合いの場が設けられることになった。
地下都市側のトップである「総裁」は出てこないそうだが、代わりにその側近が出てくる予定だ。
一方、こちら側は国王が出席することに。これは国王本人の希望である。
俺はそれを聞いたとき、最初は反対した。
相手はトップが出てこないので釣り合いが取れないし、何よりも国王が危険に晒される可能性がある――そう懸念を伝え、再考を求めた。
しかし国王は、
「自分が出ていくことと引き換えに、会談をこちらの支配地域でおこない、そして警備という名目で軍を連れて行くことも認めさせたい」
として、自身の意見を通した。
これは、地下都市側に対してかなり歩み寄った会談の条件を提示したことになる。
こちらは「おとなしく投降しなければ攻め滅ぼしますよ」という立場だったので、やる気になれば、強気に「代表者を首都まで寄越せ」という態度に出ることも可能だった。
国王がそうしなかったのは、俺とタケルで交わした約束――できるだけ死傷者が出ない解決法を模索する――に最大限の配慮をしてくれた結果だと思う。
なるべく地下都市側を刺激しないようにし、穏やかな空気で会談を、ということなのだろう。
ありがたいと思う。
交渉が決裂し、力攻めで地下都市二万人大虐殺というのは、タケルとの約束を抜きにしても絶対に避けたいから。
会談の場所は、地下都市に一番近いこちらの城でおこなうことで決定した。
軍も派遣する予定だ。
***
すっかり、早寝早起きの習慣が定着している。
寝覚めもいい。起きたときのスッキリ感は、以前よりもずっとある。
この時代に来る前では考えられなかったことだ。
あの頃は平気で夜更かしをして、朝は当然のように寝坊していた。
寝覚めも悪く、二度寝も習慣化していた。
――意識が、変わったからかな。
こちらに来てから、やらないといけないことや、考えないといけないことが多くなった。
重圧がかかることが多くなり、死の危険に晒されるようなこともあった。
結果、締めるときは締めて、緩められるときにはしっかり緩めよう、という意識が生まれてきたのかもしれない。
早寝早起きも、そんな意識の変化に、体が適応していった結果なのだろう。
しかし、今朝はいつも以上に早く起きてしまった。
まだ少し薄暗い気がするので、五時前くらいかもしれない。
きっと、今日がいつもの一日ではないからだ。
体に活を入れるため、朝の散歩をすることにした。
カイルを起こさないよう、慎重にベッドを出よ
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