67話:後見人
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を修めた人間特有の雰囲気を纏った40歳くらいの男性から、正式な貴族式の礼を受ける。なんとか見様見真似で、返礼を返すと、リューデリッツ伯自ら先導の下、応接間へ案内された。帝国軍でも屈指の将官が、俺のような子供に礼を尽くす理由に思い至らなかった俺は、ただただ場に流されるばかりだった。応接間に入ると、子供ながらに高価だと分かる椅子を勧められ、席に付く。悪い夢でも見ているのだろうか?表情にも出ていたのだろう、リューデリッツ伯が少し困った様子で話を始めた。
「ミューゼル卿、諸々の事情を話す前に、確認したいことがある。と言うのもな、私が5歳のとき、母親代わりの乳母を門閥貴族に殺された。その時に幼いなりに志を立てたのでな。卿が既に志を持つ者なら、子供としてではなく、『一人前の貴族家嫡男』として話をするつもりだ。子供としての接し方を望むかね?」
俺もすでに志を立てた身だ。すぐに首を横に振ったが、母親を早くに亡くした身としては変な親近感を覚えた。
「うむ。では一人前として扱おう。まずは......この馬鹿者め!どこまでグリューネワルト伯爵夫人のお気持ちを考えたのだ!ミューゼル家の経済状況はあらかじめ調べさせてもらった。母上がお亡くなりになられたことと、事業のとん挫が父君の心をへし折ってしまった。そのあとは伯爵夫人が何とか切り盛りされ、家庭崩壊の一歩寸前で留めていた。陛下の寵姫となる事も、もう経済的に何ともならぬ為、ご自分の将来を陛下にゆだねる代わりに、お主の将来を幸あるものにとお考えだったのだ。それを相談もなく勝手に幼年学校に入学するとは......。伯爵夫人がどれだけご心配されたことか......。今更、退学などすればそれこそ伯爵夫人を貶める口実に使われかねぬゆえ、これ以上は申さぬが、次に伯爵夫人と面会する折は、きちんと謝罪することから始められるように」
急に怒られたが、不思議と素直に受け入れられる部分があった。感情で怒るのではなく、なぜ怒るのかを懇切丁寧に説明されている感じを受けたからだ。確かに姉上からすれば、俺が勝手に幼年学校に入学した事は、勝手に軍に志願した事と同じ意味を持つ。少し考えればわかりそうなものなのに自分の感情を優先するあまり、こんな簡単な事に気づかなかった。了承の意味を込めて首を縦に振ると、伯爵は、少し間を開けてから
「ご心配のあまり、伯爵夫人は陛下に相談されました。その結果、軍でそれなりの立場にある私に、ミューゼル卿の後見人になるようにとの打診がされました。伯爵夫人もご承知の事です。これは断れる話ではありません。今日から、私がミューゼル卿の後見人となります。よろしいですね?」
勅命で姉上も了承しているとなれば、断れるわけがない。俺が了承すると、『こういう場合は、御鞭撻をよろしくお願いいたします』と言うのが礼儀だと、早速
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