暁 〜小説投稿サイト〜
稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
66話:迷走
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の裏付けのない紙幣の増刷しかない。そこに踏み込めばもう末期だ。戦争に勝てたとしても財務破綻は免れない。明るい未来にため息しか出ないがね」

「地球教徒の関係者として拘束された人々は、そのまま地球に送り込まれるらしい。本来なら返還交渉をすべきだが、密入国の上に同盟では地球教を現状、取り締まっていない。対応が違い過ぎる以上、交渉は進展しなかったようだ。まあ、献金にかこつけて、無能過ぎた某社の二代目を高等弁務官として送り込んだ以上、もともと期待もしていなかったが、自国民を見捨てたようなものだ。既に多数決を理由に少数を犠牲にする前例を作ってしまった。民主主義の有り様として決して正しいものではないがね......」

シトレと話している時と違い、ホアンと話していると大抵暗い雰囲気になり、お互いため息をつきながら別れる事が多い。今回もおそらくそうなるだろう。こんな日々が続くと、たまに暗い想像にかられる。考えてはいけない事だが、銀河連邦の末期も、戦争は無かったとはいえ、こんな状況だったのではないだろうか?
同盟政府の代議員として考えてはいけない事だが、強いリーダーシップを持った指導者がいれば、現状を少しでも改善できるのでは......。と考えてしまう自分がいる。私ですら、こう考えてしまうのだ。多くの市民が一度は考えた事があるはずだ。そうなると、軍人もそう考えた事があるという事だ。
シトレは悲観的な私に気を使って、あまり激しい表現は使わない。さすがに考えすぎだと思いたいが、予算があれば戦況を改善できると分かっているのに、それをせずに死地に追いやる政府を、軍部はどうみているのだろうか......。まさか自由惑星同盟で軍事クーデターの可能性があるとは。帝政による独裁制国家と軍人による独裁政権国家とのぶつかり合いか。さすがにこれはホアンにも話せない。

「まあ、悲観的な話をするのはお互いここだけにした方がよいだろうな。古来から預言者は民衆から疎まれ、場合によっては殺される存在だ。出来る事をしっかりやろう」

ホアンも同じような事を考えた事があるのだろうか?思わず思考を読まれたのかと驚いたが、私を驚かせた犯人は気にするそぶりもなく、残ったブラックコーヒーを口に含んで、また渋い顔をしていた。


宇宙歴786年 帝国歴477年 6月下旬
首都星ハイネセン バラード放送報道スタジオ 控室
ヨブ・トリューニヒト

「トリューニヒト議員、お互い一年生同士、色々と協力できれば嬉しいですわ。では!」

そう言い残すと、右派政党から立候補し当選した元アナウンサーのウインザー議員が控室を後にした。アナウンサー時代から、視聴者受けしか考えないコメントが鼻につく女だったが、若手・演説の受けがいいという事で選挙戦の段階から何かと比較された仲だ。今日出演した報道番組も
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