第二章
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「おい、ジジカ=フレンチおるか」
「あいつおったら出すんじゃ」
「わし等用があるのはあいつだけなんじゃ」
「あいつ出したら何もせんわ」
こう言って凄みいざとなれば店の中で暴れようとする素振りさえ見せた、明らかにまともな者達でなかった。
それで店の主が出てことを収めようとしたが。
ジジカ本人が出てだ、主に言った。
「おやっさん、用はわしにって言うちょりますし」
「だからか」
「はい、ここはです」
まさにというのだ。
「わしに任せて下さい」
「任せてか」
「ちょっと連中と話をしてきます」
「店の外でか」
「少し席外します」
こう言ってだ、そのうえで。
ジジカは男達の前に出て話をした、彼等はジジカを見ていよいよ緊張した顔になったが彼女は彼等に共に店を出る様に言って。
彼等と共に店を出た、そうして暫くして店に裏手から戻って主に言った。
「話終わりましたけえ」
「そうなのか」
「もう心配は無用です」
一切という言葉だった。
「あの連中は二度とこっちに来ません」
「二度とか」
「はい、二度と」
まさにというのだ。
「そうなりましたさかい」
「まさか」
「聞かんといてくれたら嬉しいです」
「そうか、わかった」
「そういうことで」
ジジカの顔にも身体にも血は一滴も付いていなかった、だが主にはわかった。彼女の身体から微かに血の匂いがすることを。
数日後川に真っ二つにされた柄の話ウリ男達の屍が打ち上げられた、街の警察はヤクザ者達の抗争の結果と見て身元もあまり調べずに埋葬に回した。だが。
その見事な切り口を見てだ、彼等は囁き合った。
「凄い腕だな」
「ああ、尋常じゃないぞ」
「どいつも真っ二つだ」
「全員一撃で殺してやがる」
「これは凄腕の奴の仕業だぞ」
「それは間違いないな」
こうした話をした、だが下手人は街のヤクザ者と考え後で身代わりが出ればそれを捕まえてそうでもないと後は適当にヤクザ者を捜査して終わらせることにしてことを済ませた。この街の警察のヤクザ者への捜査はわりかしいい加減なことも幸いした。
だがわかる者にはわかった。
「全員一撃で真っ二つとかな」
「ジジカ=フレンチしか出来るか」
「この街に来てるっていうが」
「マロシヒの抗争で数えきれないだけのヤクザ者切り殺してきた奴しかいない」
「あいつの手口だ」
「他には考えられるか」
こう話すのだった、しかしだった。
店にいるジジカは何も語らない、それで店の主に言うのだった。
「店で何かありそうなら」
「すぐにだね」
「わしに言って下さい」
こう言うだけだった、そうして店の用心棒の仕事を続けるのだった。過去を隠したうえで。
仁義なきもふもふ 完
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