第一章
[2]次話
汚れちまった悲しみ
X95は戦争を曳き御高祖たとされてそれで今は身を隠してそうしてひっそりと暮らしていた。その傍にはいつも兄弟機であり実用型であるX4がいるが。
人類の敵と責められている為にいつもこそこそと身を隠していた、暮らしは浮浪者そのものだった。
だがある日のことだった。
彼と兄弟機にだ、ある男が声をかけてきた。
「どうしたんだ」
「どうしたって」
「随分汚れてるな」
見れば暗い顔をしている、中年のみすぼらしい外見の男だった。
「浮浪者か、子供達なのに」
「それは」
「それならだ、来るか」
「来るかって?」
「俺の家にな」
こう95に言うのだった、そして4にも。
「そうするか」
「あの、それって」
「ああ、言った通りだ」
返事は一つだった。
「俺の家に来るか、二人共」
「行っていいの?」
95は男に暗い顔で尋ねた。
「僕が」
「御前さんがいいんならな」
それならとだ、男は95に答えた。
「いいさ」
「そうなんだ」
「当然あんたもな」
男は4にも言った。
「来ていいぞ」
「そうですか」
「ああ、御前さん達さえいいのならな」
「あの、どうして」
「御前さん達は同じ目をしているからな」
男は暗く沈んだ、まるで闇の中から光を見る様なそうした目だった。黒いその目は絶望と悲嘆がはっきりとあった。
「だからな」
「それでなの?」
「御前さん達に声をかけたんだ」
こう言うのだった。
「そうしたんだ」
「そうなの」
「ああ、それでまた聞くがな」
まさにと言うのだった。
「どうするんだ?」
「おじさんのところにですか」
「少なくとも悪いことはしない」
一切という言葉だった。
「御前さん達にな」
「悪いことは」
「そんなことをする様に見えるなら来ない方がいい、何ならすぐに」
男は見逃していなかった、95のポケットに拳銃があることを。もっと言えば彼はその服の中に色々な銃火器を持っている。それは4も同じだ。
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