第二章
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「こんなのでな」
「御前も苦労してるんだな」
「兄貴みたいになれたら、双子だから余計にな」
生まれた時から一緒でしかも年齢も月日単位で同じだ、だから余計にというのだ。綾人は彼だけだが彼にとっては非常に深刻な苦悩を抱いているのだ。
「辛く思ってるんだよ」
「そういうことか」
「ああ、本当にな」
「どうにかしたいか」
「この状況をな」
こう言ってだ、彼は日々苦労していた。だが。
所属している大学の水泳部ではだ、常にだ。
抜群の成績で泳ぐ度にコーチに言われていた。
「またタイムが伸びた」
「そうですか」
泳ぎ終えた彼は冷静な顔で応えた。
「またですか」
「ああ、オリンピックもこれでな」
「中学の時からですが」
実は綾人は水泳では世界的選手だ、ただ速いだけでなく冷静で頭のいい水泳をして隙のないスイマーだと言われている。
「今回も」
「ああ、出れそうだな」
「わかりました、ただ」
「前の大会のことか」
前回のオリンピックのことだとだ、コーチもわかった。
「残念だったな」
「銅でした」
そのメダルはというのだ。
「ですから」
「それでだな」
「はい、出来れば」
心からの言葉だった、冷静だが悔しさが言葉に滲み出ていた。
「今度こそ」
「金だな」
「また取ります」
「頼むぞ、その意気でな」
まさにとだ、コーチも言う。彼は水泳選手としては抜群に優秀だった。あらゆる大会でメダルの常連であった。
しかしそれは水泳の時だけで今度は友人から言われた。
「御前水泳は凄いな」
「進学も実はな」
「そっちだよな」
「スポーツのな」
即ち水泳でというのだ。
「それでだしな」
「何で水泳になるとな」
それこそとだ、友人は綾人にどうかという顔で述べた。
「御前凄いんだ?」
「あれか?昔から水を被るとな」
それでとだ、綾人も話した。
「急に落ち着いて冷静になってな」
「考えられる様になるんだな」
「ああ、それで身体の方もな」
そちらもというのだ。
「急にな」
「それこそか」
「ああ、何でも出来るんだよ」
「だから水泳はか」
「頭から水被るっていうかな」
「身体全体いつも水の中にあるからな」
だからだとだ、友人も話した。
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