284部分:第十九話 ヴェーヌス賛歌その十一
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第十九話 ヴェーヌス賛歌その十一
「それは違うのだ。私は」
「陛下は」
「彼の立場になりたいのだ」
その彼こそがなのだった。王の永遠の存在であるのだ、
「ローエングリンに」
「そしてタンホイザーにですね」
「彼になりたいのだ」
王の願いがだ。静かに、だが確かに語られていく。
「しかしそれはできるかどうか」
「確かタンホイザーは」
ホルニヒはここで気付いた。彼等は何かというとだ。
「歌を歌う騎士ですね」
「そうだ。私は歌もまた愛している」
「そしてそれによりエリザベートに歌を向けますね」
「それが彼だ。そしてローエングリンは」
「ローエングリンは」
「彼もまた歌なのだ」
「歌を生業とする立場でなくとも」
それでもだと話すのだ。王はそのローエングリンとは何かも話していく。
「彼はその存在自体が歌なのだ」
「彼自体がですか」
「詩人だ」
王は詩も愛している。それもだった。詩も芸術だからだ。それを愛するのも当然だった。狩りは嫌いでもだ。そちらは愛しているのだ。
「彼はまさにそれなのだ」
「詩人である彼に」
「なりたいと。思ってきている」
それは今現在もだというのだ。
「常にだ」
「陛下、では」
「では、か」
「ローエングリンになられたいのですね」
ホルニヒはまだ天幕の寝床にいる王に話すのだった。
そしてだ。さらにであった。
言葉を出していく。彼のその心をそのまま出した言葉をだ。
「是非ですね」
「その通りだ。私は彼になりたい」
「あの騎士は聖杯城の主となる者ですね」
「言うならば太子だな」
「はい、やがてその城の主となる者です」
それは自分から歌うのだ。名乗りの時にだ。
「ですから。その彼には」
「私はなれるか」
「そう思います」
「そうだな。私はなれるのだ」
王は寝床の中で半身を起こしたままでだ。遠くにその彼を見る目で話すのだった。そこには小舟の上にいるローエングリンがいた。
「あの騎士に」
「はい、それでは」
「やはり私は美を築くべきなのだ」
またこの話になった。
「その白銀の世界をだ」
「では。陛下は」
「バイエルンに戻ればだ」
そうなればというのだ。それはもう少し先のことだった。
「それからすぐに動こう」
「美を築かれるのですか」
「準備をしなければならない」
まずはそこからだというのだ。
「早速な。そうしよう」
「はい、それでは」
「しかしその前に。ローエングリンならばだ」
白銀の騎士ならばというのだ。今王は自身を完全にだ。その騎士と重ね合わせてだ。そのうえで王は話していく。
「エルザを迎えないとな」
「あの姫をですね」
「ヴァルターでもジークフリートでもだ」
彼等でもだというのだ。それぞ
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