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緑の楽園
第五章
第48話 無限の世界
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思うが、年長者の指導は貴重だ。

 ヤマモトは、部屋の窓際に置いてあった背もたれのない椅子を持ってきて、ベッドの近く、入口側に置いてそこに座った。
 立ち上がっていた俺とカイルもベッドに座り、クロも俺の足元で座り込む。
 全員座った形だ。

「私からは、頭の整理の手伝いをしようと思う」
「整理?」
「そうである。打ち合わせのときから、お前は重度のプレッシャーにより酷く緊張し、不安に苛まれて混乱しているように思える。頭が整理できていない」
「まあ、そのとおりですね。重たすぎて怖くなってます」
「頭の中は無限の世界である。その無限の世界において、どんな範囲で、そしてどんな順番で見ていくのかというのは、大変重要なことだ。
 何がベストなのかは、その案件ごとに異なる。森から見ていくのか、それとも木から見ていくのか。今回はどちらがよいのだろうか?」

「……ちょっとよくわからないですが」
「ふむ。今回のお前の場合、案件の全体もしくは広い範囲を見ようとしたときに、その重たさから、恐怖やプレッシャーを強く感じて混乱してしまったわけであろう?
 そのようなときは、いきなり大きく見ようとせず、ひとまず深呼吸をし、一つ一つのモノから見たほうがよいと考える。森は怖くとも、木の一本一本が怖いわけではあるまい」
「……」
「まずは深呼吸をするがよい」

 スーハ―スーハ―、深呼吸をしてみた。
 なぜか、カイルとタケルも深呼吸している。
 クロはじっとその様子を観察していた。

「よし。ではまず、なぜお前が選ばれているか、その理由から始めようではないか。なぜだ?」
「んーっと。俺が古代人だから?」
「そうであるな。では、なぜ古代人だと今回適役になるのであるか?」
「地下都市の人間は地上の人を『人間』だと思っていないので、他の人では会話に応じてもらえないということですね。たぶん」
「そのとおりである。古代人のお前であれば、彼らにとっては『人間』であり、そして先輩にあたるわけであるから、まず話くらいは聞こうとなるであろう」
「なるほど」

 俺はタケル説得のとき、神が「最も成功率が高い者に仕事を依頼すること――それはいつの時代でも当然のことだ」と言っていたのを思い出した。
 今回もそういうことになるのだろうか。

「そうなれば、まずお前が何をすればよいのかはわかるな?」
「……古代人であることの証明?」
「そのとおりである。証明できるものはあるな?」
「いちおうあります」
「よし。では捕縛した二人に対し、まず一番最初にやることが決まったな」
「はい。自己紹介ですね」

 ヤマモトは「そのとおりである」と言って頷いた。

「では次は、今回こちらにとって特に避けなければならぬことは何か、である。どんな仕事をする
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