第五章
第48話 無限の世界
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……」
「え。違うって何がー?」
「ややこしくなるからお前は喋るな!」
「ふむふむ。それはさておき、オオモリ・リクよ――」
さておかれた。
「私ヤマモトも、お前のことは、陛下をよく助けてくれており、極めて有用な人間であると評価している」
「はあ」
「しかし。自覚もしているだろうが、お前自身はさほど実務遂行能力があるわけではない。後先のことを考えず行動することも多く、思考が短絡的で拙いようである。そしてプレッシャーにも強くはない。つまり『有用』ではあるのだが『有能』ではない」
――なんだこいつは。
現れていきなりディスってきたぞ……。
もしかしたら、前の打ち合わせのことを微妙に根に持っているのだろうか――そんなことすら考えてしまった。
あのとき、ヤマモトはタケル自害の偽情報を公表する案を出したが、俺は人道的な理由で反対した。
結局ヤマモト案しかなかったため、それが通ったわけであるが、彼を汚れ役にしてしまったのは間違いないだろう。
「あー、もしかして。前の打ち合わせで、俺があなたを悪役にするようなことを言ったので、怒ってらっしゃるとか?」
「ほほう、そんなことを気にしているとは。なるほどやはりお前は短絡的であるな」
「はい?」
「参謀というのは、悪役となってナンボの仕事であるぞ」
「はあ、そうなんですか?」
「そうだ。お前の思ったとおり、あの案は人間としてはあまり褒められたものではない。だがあのケースでは、あれより方法はなかったわけである。そうなれば私ヤマモトが率先してそれを提案するのが筋である。
誰かが汚れなければならぬのであれば自分が汚れる、それは参謀の大切な役割のひとつなのだ」
「なるほど。じゃあ俺が反対したのは空気が読めてなかった感じですかね」
「いやいや、やはり人道的には問題があるのだから、誰かが反対しなければならないのだ。よってお前が反対したのは問題はないぞ。
お前が反対意見を述べなければ、おそらく他の者が反対したはずである。満場一致ではタケルがあまりにも気の毒であろう」
そういうことをタケル本人の前で言ってしまっているという点を除けば、なるほどな話ではある。
少し、ビックリした。
この人物はあまり考えていない人間だと勝手に脳内評価していたからだ。服装も服装だし、単なる目立ちたがり屋とすら思っていた。
意外とそんなことはなかったらしい。
よく考えたら、本当に何も考えない人間であれば、とっくに参謀をクビになっているはず。
前はヤハラがいたので、遠慮していただけということなのかもしれない。
タケルを見ると、「そうだったのか」というような顔でヤマモトを見ていた。
「僕、皆さんに気を遣わせてしまっていたんですね。すみません
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