282部分:第十九話 ヴェーヌス賛歌その九
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第十九話 ヴェーヌス賛歌その九
王はすべきことしかないとも言っていい。玉座は温めるものではないのだ。
その多くのことについてもだ。王は話すのである。
「その中の一つがだ」
「御后を迎えることですね」
「そうだ。そしてだ」
「そして?」
「子だな」
次に話されるのはこのことだった。后を迎えればだ。
跡継ぎとなる子だ。そのことも絶対なのである。
それを己から話してだ。王は見るのだった。
「子もだ」
「バイエルンの次の主をです」
「考えられないことだ」
王にとってはだ。とてもだった。
「私が子をもうけることはだ」
「誰もがそうだと聞いていますが」
「人は新たな命を作ることができる」
生きているならばだ。それは可能だ。
魔術の様なものだ。しかし王はその魔術についてだ。
「しかし私はそれは」
「それは?」
「私にはできないのだろう」
己を見てだ。そうしての言葉だった。
「そうしたことはだ」
「子をもうけられることはですか」
「そうだ。私はそうした人間ではないのだ」
まただ。己を見て話すのである。
「私にはだ」
「それは」
「誰もがだというのか?」
王はホルニヒが話す前に言ってみせた。
「それは」
「はい、そうではないでしょうか」
「誰もが子をもうける」
王はそのことを言う。
「それができるな」
「最初は誰も想像できるものではないと思います」
ホルニヒは王に穏やかな言葉で話す。
「しかし。それでもです」
「現実のものになっていくものだというのだな」
「そう思いますが」
「誰もが子供から大人になり」
王が今話すのはだ。成長だった。
「そして結ばれ子をもうけるな」
「そういうものではないでしょうか」
「そうなのだろう。普通は」
「普通は、ですか」
「そうだ。普通はそうなのだ」
普通という単語をだ。王は出していくのだった。
「それが世界の摂理だからな」
「夫婦になり、ですね」
「神もそれを定められた」
アダムとイブの話にもなった。それにもだ。
「そしてそれはだ」
「王家ならば余計にですね」
「王はどうしてなるか」
それがどうしてなのかもだ。王ならばわからないことではなかった。
それを話してだった。王はさらに遠い目になるのだった。
「それは血脈故にだ」
「王家であるということの」
「私はそのヴィッテルスバッハ家の血脈によりだ」
「王になられていますね」
「その私が」
王がだというのだ。
「后を迎えず。子をもうけないのはだ」
「誤りだと」
「何度も言うがわかっているのだ」
それはどうしてもだというのだ。王ならばだ。
「だが。私はどうしてもだ」
「御后を迎えられることも」
「子ももうけることもだ
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