28部分:第二話 貴き殿堂よその六
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第二話 貴き殿堂よその六
「それを御願いします」
「食事ですか」
「出来ればハンバーグを」
ビスマルクは微笑んでそれを願ってきた。
「それも上に」
「目玉焼きを乗せてですね」
「御存知でしたか」
「それがお好きと聞きましたので」
それでだというのだった。
「ではそれをですね」
「有り難うございます。それでは」
「私も最近食に目覚めまして」
「おお、それは何よりです」
「食は人の心を和ませ楽しませます」
これはその通りだった。食というものは極論すれば人の全てである。だからこそ太子もまたこう話すのであった。
そうしてだ。彼等はその食を楽しむのだった。その後でだ。
ビスマルクは用意された部屋に入った。豪奢なホテルの一室にだ。そこに入るとすぐにだ。姿勢のいい執事が彼のところに来た。
そうして上着を脱がせる。そのうえで主に問うた。
「御主人様、御機嫌ですね」
「わかるか」
「はい、お顔に出ています」
そうだというのだった。見れば実際に彼の顔は少し綻んでいた。
「バイエルンの太子殿下はいい方ですか」86
「素晴しい方だ」
「そう仰いますか」
「おかしいか」
「いえ、珍しいと思いまして」
こう答える執事だった。そのホテルの部屋は金色と青で彩られている。豪奢でありながら何処か落ち着いている。そうした部屋であった。
「御主人様がそう仰るとは」
「確かにな」
ビスマルク自身もそれを認めた。上着を脱がされた彼はソファーに座った。その前に使用人がコーヒーを出してきた。それを飲みながら話すのだった。
「私は人に対して辛辣だからな」
「あの殿下はそこまでの方ですか」
「決して卑しい方ではない」
まずはその品性から話すのだった。
「むしろ非常に高貴な方だ」
「バイエルンの次の王に相応しく」
「それ以上だな。あの方は」
「王以上の気品の持ち主ですか」
「この世のな」
こう言ったビスマルクだった。
「どの王よりも素晴しい気品を持たれている」
「そこまでなのですか」
「まるで。聖杯の城の王の様だ」
「といいますと」
執事はそれを聞いてだった。この名前を出した。
「パルジファルですか」
「そうだ、あのな」
「聖杯を見つけ出したあの騎士」
「そしてその城の王となる者だ」
まさにそれだというのだ。太子は。
「そうした方だ」
「まことに素晴しい方なのですね」
執事は主の言葉を己の中で反芻しながら述べた。主が人に対してそうしたことを言うことは滅多にないことだからということもある。
「バイエルンの太子は」
「資質も。既に出されているものも」
ビスマルクはさらに話していく。コーヒーを飲みながら。
「素晴しい。ドイツは素晴しい君主を手に入れることになる」
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