離れた場所にて:あしあと
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ダはやや気の重い選択をすることにした。
「ケンカじゃないよ。私ってこんな性格だから、自分だけ張り切っちゃってたから普段はむしろ気を遣わせちゃってたくらい。………だから夫は私を殺そうとしたんだと思う」
「………え?」
戸惑いから言葉を失ったヒヨリをそのままに、グリセルダは話を続けた。
「このゲームを始める前はね、私は夫の前で性格を偽ってたんだ。穏やかで、大人しくて、物腰の柔らかい性格で、お姫様みたいな人間をゲームの中で知り合った現実の彼の前でまで演じちゃったのよ。いつの間にか自分も疲れちゃってたのかな。そんなときにこのゲームに閉じ込められて、非常時にかこつけて演技をやめちゃってた。………そんなの、当然あの人からしたら驚くわよね」
それらの情報はヒヨリの脳内で洪水のように流れ込み、渦のように幾度となく繰り返し往来する。
何気ないように語られた言葉が、ヒヨリには余りにも重かったのだ。誰かの死を認識する。それ自体は決してヒヨリも覚悟していなかったわけではない。誰かがどこかで命を落とす。このSAOというゲームの中で剣を執る誰しもが背負うリスクを自覚していなかったわけではない。こんなにも身近な誰かが悪意によって命を落としかねない危機に瀕した。たったそれだけと大勢は聞き流せるし、話題を逸らすだろう。しかし、ヒヨリの思考を釘付けにするにはそれだけで十分だった。
「だから、ヒヨリちゃんにも一歩踏み出して欲しいんだ。こんな悪いお手本に、なっちゃダメ………って、あの………えっと………?」
失速し、唖然とするグリセルダは、ただ目の前の状況に言葉を失っていた。
ヒヨリがいきなり飛び掛かるように席を立っては瞬く間にがっちりとホールドされてしまったためだ。決して身体的な包容力で敗北したことで言葉を失ったわけでも、圧倒的な大質量が対応し切れないAGI値で迫ったわけで思考が停止したわけではない。ただ、グリセルダの予想以上にヒヨリが《誰かの為に涙を流せる》という誤算が生じたからで、今もなお自分を抱き締める少女の引き攣った呼吸を宥めるようにその背中を撫でる。視界こそ覆われて窺い知れないが、グリセルダには充分過ぎるほど理解出来た。
「………大丈夫だよ、ヒヨリちゃん。今は辛くなんかないよ」
そう、これは既に終わってしまった出来事。
振り返り、誰かに言葉として紐解くことは出来たにしても追体験をさせることは叶わないし、巻き戻して最良の結末へ修正することも当然不可能だ。誰かの傷を察して涙を流せるその善性はきっとかけがえのない美徳なのだろうが、過ぎてしまった事象に対して心を痛めるという行為は何者でもなくヒヨリ自身を苦しめる。それを知っていたからこそ彼は伏せ続けたのだろう。
「私やギル
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