278部分:第十九話 ヴェーヌス賛歌その五
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第十九話 ヴェーヌス賛歌その五
「だから私は宮殿にはだ」
「女性はですか」
「そうだ。ワーグナーのヒロイン達に」
「そしてですね」
「歴史上の女性達を置きたい」
そうだと話す。そうした女性達をだ。
そんな話をしながらだ。パリを歩くのだった。その周りの美女達はだ。
そんな王を見てだ。こう話すのだった。
「あれだけの美貌の方は」
「はい、いませんね」
「バイエルンは幸福です」
「全くです」
バイエルンの民への憧れの言葉も出た。
「まさにバイエルンの誇りですね」
「そうです。しかも非常に聡明だとか」
「芸術を愛されるとか」
「しかも清潔で」
少なくとも王は清潔であった。潔癖症の気質があると言ってもいい。
その王の噂が囁かれる。その中にはだ。
口さがない言葉も出ていた。その言葉は。
「リヒャルト=ワーグナーにたぶらかせられているらしいな」
「その様ですな」
「全てを貢いでいるとか」
「あの山師にですか」
「弟子の妻を奪う様な男に」
このこともだ。話されるのだった。
「その前は恩人の妻と噂になりましたし」
「舞台の踊り娘達にも次々と手をつけるとか」
「おまけに尊大で図々しい男です」
「パリでも評判ですから」
「いかがわしい男です」
この評価がだ。この街でも話されるのだった。
そしてだ。さらにだった。王自身のことも話される。
「どうも同性愛者だとか」
「ああ、そうらしいですね」
「噂では女性を愛さないとか」
「美青年だけだとか」
「神の教えに反しますね」
キリスト教では同性愛は禁じられている。実に忌まわしい大罪とされているのだ。しかし王はだ。その同性愛に耽溺しているというのだ。
この話をする者達はだ。王を否定する目で見てだ。そうして話すのだった。
「あの王はそうした方ですか」
「いかがわしい人物を傍に置き」
「そして同性愛者」
「困った方ですね」
「全くです」
賛美だけではなかった。そんな言葉も出される。
「バイエルンも大変ですね」
「浮世からは離れた方の様ですし」
「何かあると何処かにお隠れになられるとか」
「そういえば今も」
「そうですね」
パリにいることについてもだ。囁かれるのだった。
「あのお連れの人は愛人で」
「ただの従者ではなくですね」
「男の愛人」
「そしてお忍びでここに来られている」
パリにだ。そうしているのではというのだ。
「いい御身分ですな、誰もが生きるのに苦労しているというのに」
「バイエルン王はお気に入りの音楽家に何もかもを貢ぎ」
「そして男の愛人を連れて旅を楽しむ」
「そうした方なのですね」
「困った方です」
「カトリックであるというのに」
ここでもだ。このことが問題になった。
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