第五章
第47話 茶屋と仔犬
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
城下町は、いつも活気にあふれている。
通りには、常にたくさんの通行人が、各々の目的地へ向かうために歩いている。
いかにも首都の人間という馴染んだ雰囲気の者もいれば、キョロキョロとした地方から出てきたと思しき旅人もいる。
ときには、馬車や人力車が、警笛のような音を鳴らしていた。
通りの両脇に連なっている店の店頭では、いつも笑顔の商売人が立っており、通行人へ声掛けしている。
店はコテコテの和風店舗もあれば、やや洋風にも見える店舗もあったりする。
俺から見れば統一感がないと感じるその景色も、この時代の人には当たり前のものなのだろう。
今日も、目に入る景色はいつもの城下町、のはずであるが――。
「やばい、ドキドキしてきた……」
緊張からか、色彩が全体的に重いように感じていた。
「オオモリ殿、さっきから動きが不審すぎです。もう少し普通にしていただかないと怪しまれます」
「いやあ、そりゃわかってるんですけどねえ」
現在、一般人に扮した城の兵士五人と、ヒゲと帽子で変装した俺とタケル、計七人で歩いている。
クロは少し距離をとっている人力車の中にいる。何かあったらすぐに飛び出してこられる態勢だ。もちろん、車をひいているのは車夫に見せかけた兵士である。
目指す先は、城下町における『組織』の隠れ連絡事務所。
前に訪問した、地図屋「ヤマガタ屋」の近くにある茶屋である。
突入する予定なのは、茶屋に顔を覚えられていないことが確実な兵士五人のみ。
タケルは変装したまま外で待機。捕らえた人間が地下都市関係者であることを、その場で確認する予定だ。
俺はタケルの保護者という立場で同行している。
なので、やはり中には入らず外で待機することになるわけだが、緊張するなと言われても無理がある。栄養ドリンクを飲んだ後のように心臓が強く拍動していた。
神降臨パーティの日から、今日で四日目になる。
タケルが捕縛されたことについては、二日ほどきつく緘口令が敷かれていた。
そして打ち合わせの結果、昨日に正式な発表をおこなっている。
内容は、「神降臨パーティに暗殺者が侵入。捕縛して二日間拷問するも口を割らず、看守の隙をつき自害」というものになった。
例によって新聞が刷られているので、すでに首都内には広まっているだろうと思われる。
もちろんタケルは自害などしていないので、発表した情報は正確なものではない。打ち合わせで決めた偽情報である。
この偽情報、参謀ヤマモトのアイディアである。
タケルが帰順し情報提供していること――それを秘密にするべきというのは、首脳陣一同、意見が一致していた。
しかし、だからといって、暗殺未遂事件があったのに何も情報を出さない
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ