第五章
第47話 茶屋と仔犬
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人間に捕まった例は数例あったそうだ。しかし、いずれも自害に成功し、情報が洩れることはなかったそうだ。
諜報員や戦闘員はそのように教育されており、拷問されたとしても、口を割らず「きちんと死ぬように作られている」のだとか。
そんな事情があるので、茶屋はタケルが国に帰順しているなどとは夢にも思わないだろう、ということだ。
結果的にこちらには都合がよいが、何とも恐ろしい話である。
そしてますます、タケルの協力が得られている現状は、この国にとって『奇跡』としか言いようがないと思った。
神は「お前という古代人に会い、そして話したことで、洗脳から解き放たれたのだと思う」と言っていた。
洗脳の支えになっていたのは、「地下都市の人間は古代人の正当な後継者であり、地上の亜人とは違う」という思想である。タケルの場合、神社での拉致事件のときに古代人である俺がそれを否定している。捕縛されたときには、すでに洗脳はかなり解けていたのだろう。
神の言うことも、決して間違いではないのかもしれない。
まあ、説得の仕事を俺に押し付けたことを正当化するためのお世辞、という見方もできるわけだが。
***
さて。茶屋に着いた。
前に来たときは、あまりきちんと観察していなかった。あらためて外観を確認すると、自分の時代で連想するような和風の茶屋ではなく、洋風でレトロな喫茶店という感じがした。
入口は小さな木のドアで、脇にはあまり背の高くない植物が植えてある。意外とおしゃれだ。
兵士の一人が、小さな声でささやいてくる。
「では客を装って捕らえてきます。少し離れた所で入口の扉を観察しながら待っていてください」
「わかりました。宜しくお願いします」
「オオモリ殿はくれぐれも自然に頼みますよ。怪しまれないようにしてください」
俺がどもりながら返事をすると、兵士たちは中に入っていった。
道路の少し離れたところから、茶屋のドアをチラチラと観察する。
アゴの付け髭をいじる。落ち着かない。
「大丈夫かなあ」
「大丈夫ですよ。兵士さんには中のことも詳しく伝えてありますし」
俺とは対照的に、落ち着いた様子でタケルが答える。
彼は頬に付け髭を付けている。正直言ってまったく似合っていない。こんなときでなければ、からかってやりたいところだったかもしれない。
彼の言うとおり、兵士に内部の詳しい情報は伝わっている。
茶屋には店の人間が三人いるが、地下都市の関係者は壮年の店主と副店主のみであるらしい。もう一人の接客担当の女性は関係者ではないとのこと。
間取りについては、店舗で使っているホールとキッチンのほかに、地下都市関係者しか入れない事務室があるらしい。ただ、
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