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緑の楽園
第五章
第47話 茶屋と仔犬
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というのも不自然である。

 どうしようかと一同考えていたところ、彼が「私ヤマモトに妙案がある」などと言い出し、「自供を拒否したまま死亡したことにするのがよかろう」と提案した。
 つまり、タケルが死亡してしまい、この国は何も情報を得られなかった――ということにすれば、地下都市側も油断して対応が遅れるかもしれないし、茶屋の関係者にも逃げられなくて済むだろうということらしい。

 俺は「形の上とはいえ、タケルをこの世からいなくなったことにするのは抵抗がある」と言ったが、タケル本人は「その気持ちだけで十分です」とヤマモト案を了承。最終的に彼の案のとおりにすることになった。

 今思うと、俺は対案を出すわけでもなく単に反対しただけであり、結果的にヤマモトを汚れ役にしている。
 なんだかタケルにもヤマモトにも悪い事をしてしまった気がして、後味の悪さはある。
 まあ、それは今後の反省材料にしなければならないとして……。

 茶屋にいる『組織』の人間――それは重要なキーマンになると思われていた。

 俺は地下都市に本拠を置く『組織』の対処について、国王に「なるべく被害を出さない解決法を模索したい」というお願いをしており、了承を得ている。タケルと交わした約束があったためだ。

 なので、まずは先方の要人との交渉の場を作り、そこで降伏を促そう――そのような方針でいくことになっているのだが、現状では地下都市とのパイプがない。
 亜人呼ばわりされているこちらの人間たちでは、地下都市に近づいただけで射殺されてしまうだろう。
 タケルも、今となっては『組織』の人間に顔を見られたら殺されてしまう可能性が高い。よって、彼にも頼めない。

 そこで、茶屋である。
 茶屋にいる関係者を生け捕りにし、本部の地下都市に取り次いでもらえるよう協力をお願いできれば、大変に好都合なのだ。

 茶屋は、パーティでの暗殺未遂事件後も営業を続けているらしい。
 正直、俺はそのことにも驚いた。
 タケルが音信不通で戻ってこない時点で、彼がパーティの日に国王暗殺に失敗したということは容易に想像できるはずだ。
 普通の感覚であれば、彼が捕らえられて拷問を受け、茶屋のこともしゃべる可能性もある――そう考えて警戒するはずなのでは? と思った。

 ところが、タケルが言うには「茶屋はそのような心配はしていないはずです」とのこと。
 さらには城が発表した偽情報についても、「僕が何もしゃべらずに自害したという情報自体は、まったく疑わないと思います」とのことである。

 いったいどういうことだ? という俺の疑問に、彼は『組織』の厳しい教育のおかげだと説明してくれた。
 地下都市は、もう千年以上存在している。
 長い過去の歴史では、『組織』の諜報員や戦闘員が地上の
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