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SAO─戦士達の物語
MR編
百五十六話 いつか貴女も
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「アスナもキリトの事目で追ったりしたの?」
「えっ?そ、それは、まぁ……と、時々ね?」
「顔がにやけてるよ?」
「えっ!?ん、んんっ」
からかうようにニヤーッと笑って言ったユウキに、慌てて咳払いを挟みながら表情を引き締めるが、どうにもあの頃の記憶を思い出すと、今も頬が緩んでしまう。今も十分に幸せなのだが、あの頃、一人の人に振り向いてもらおうと必死になっていた思い出にはまた、別の幸せがあった。
「恋をしている」。ある種憧れだった「それ」を、自分がしていることそのものにあの頃のアスナは生き甲斐すら感じていたから。

「恋って、幸せ?」
「え……?うんっ、幸せだよ!辛い事もあるけど、でも、凄く幸せな気持ちだと思うな」
「そっかぁ……」
憧憬の色を瞳に濃く映しながらユウキは歩く。まだ見ぬ自分のその感情が、一体どんな色をしているのか、どんな思いを自分の胸に浮かばせるのか、今の彼女にはそれが気になって仕方がないのだろう。
勿論、本来恋愛と言うのはしたいと言ってするようなものではないし、気持ちが先行するあまりに妙な人間に引っかかってしまう男性女性もいると聞く、その辺りの危険についてはまた教えるとして、今は彼女が新たな興味を持ち始めた事を素直に喜ぼう。そんな、成長を見守る姉のような感覚に浸っていた為に……頭上から降りてきた鉄格子に対して、危うく顔面をぶつけるところだった。

「きゃっ!?」
「え!?あー!」
気が付くと、粗い鉄格子が見事に二人の間を別つように降り立っていた。

「ごめーんアスナー……全然気が付かなかった……」
「うぅん、私もだから……でも、駄目だね、これ破壊不能オブジェクトだわ」
「じゃあここでお別れかぁ……大丈夫?アスナ」
「うん、ありがとうユウキ、貴女と話してるうちに、大分気持ちが解れたみたい」
務めて自然な笑顔でそう言うと、先ほどのアスナの様子を思い出してか気遣わしげだったユウキの瞳に安堵の色が見え、コクリと頷くと、元気よくぴょんと跳ねて振り返る。

「じゃあ、ボク行くね!アスナも、気を付けて、後でね!」
「うん!頑張って合流しよう!」
暗がりにその姿が見えなくなるまで手を振っていたユウキを見送って、アスナは壁にぽっかりと新しく出来た側道を睨みつける。ユウキにああは言ったものの、本音を言えば今も恐ろしくない訳では無い。だが恐れていては前には進めない。再び彼女と合流するためならば、高々アストラル系のモンスターなぞ恐ろしいものか!と、自分を鼓舞しながらアスナは通路を進みだす。相変わらず薄暗い通路のひんやりとした空気に頬を撫でられながら奥へと進むと……T字路が見えた。その奥に人影が見えて、彼女はレイピアに手を駆け……

「……ん?アスナ?」
「……キ……」
見慣れた暗闇に紛れる漆黒のロングコート
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