MR編
百五十六話 いつか貴女も
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「うぅ、なんでこんなに……」
自分のリアルLUKの低さがほとほと嫌になりながら、アスナはぼやく、傍から見ると少しばかり慎重すぎるくらいの用心深さで彼女は通路を進んでいく。無論、彼女とて無意味にこんな時間のかかる進行をしているわけではない。当然だが、それなりに正当な理由があるのだ、つまり、そもそものステータスが後衛ビルドである以上偶発的な遭遇からの接近戦は可能な限り避けたいとか、恐らくは存在しているであろうダンジョンボスと対したときの消耗を考えれば可能な限り避けられる接敵は避けておきたいとかであって、断じて……断じて、曲がり角でアストラル系モンスターに出会ってしまって小さな悲鳴を上げたからとか、先ほどからやたらとそのタイプのエネミーにばかり遭遇するからとか、そのくせ分断によってずっと一人で少し心細いからとかではないのである。今ならリョウにすら飛びつけそうだとか思っていないし、キリトに会ったら泣きつくかもとも考えていない。絶対に違う。
「とにかく、進まないと……」
しかしなにはともあれ、前に進まない事にはどうにもならない。幸いな事に、未だダンジョンの中心にはたどり着いておらず、方針に変化はない。サチと違って、アスナはソロでの近接戦にも慣れているので自衛にはある程度は困らない。流石に少々心細さが無い、と言えばウソだが、それも今は少なくとも耐えられる範疇だ。
「(とにかく、囲まれないようにしないと……ッ)」
ヒヤリ、とした。
肩を何か冷たいもので撫ぜられたような、感覚と共に、前進に在る筈の無い鳥肌が立つような感覚を覚える。
よし、落ち着こう、もう何度かあった演出だ、アストラル系のモンスターは、ALOではこうして一度プレイヤーが通り過ぎた場所などにあえて現れたりして、プレイヤーを脅かすドッキリ的なテイストの登場をすることがある、いわば一種の初見殺し的な要素にすぎない、そう、分かっていれば何も問題はない、逆に脅かしのための威嚇動作の間に、此方からソードスキルを一撃叩き込んでやればいいのだ……ッ!
「〜〜ッ!!」
バッ、と振り返って愛用の細剣を構える。しかし固い決意と共に向きあったその空間には……薄暗い松明の灯りにユラユラと照らされた通路が続いているだけで、アストラル系モンスターのアの字も無かった。
「…………はぁ」
どうやら、自分でも思った以上に神経質になっているらしい。最近、一人で行動するという事があまりなかった所為だろうか、どうにも無意識のうちに気持ちが緩んでいるらしい、剣士としての魂に脂肪が付いたとでも言うべきだろうか……いずれにせよ、引き締め直すにはいい機会かもしれない。むんっ、と気を引き締め直して、身をひるがえす。そこに、青白く光る骸骨が白いローブを被ったような、浮遊体が存在していた。
「──」
「オオ
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