274部分:第十九話 ヴェーヌス賛歌その一
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第十九話 ヴェーヌス賛歌その一
第十九話 ヴェーヌス賛歌
王はフランスでの旅を続けていた。その中でだ。
歌劇場もよく通った。その中にいるとだ。
着飾った美しい貴婦人達はだ。こう話をするのだった。
「あれは間違いなく」
「そうですね、あの王です」
「バイエルン王です」
「間違いありませんわね」
すぐにだ。王であるとだ。わかったのだ。
そのうえでだ。美女達はこうも話していくのだった。
「噂以上ですね」
「背は高くすらりとしていて」
「彫刻の様なお顔立ち」
「着こなしも見事です」
「何とお奇麗なのか」
「この世のものとは思えません」
その美貌故にだ。注目されるのだった。
それで歌劇場ではだ。舞台よりもだ。
王が注目された。貴婦人達は誰もが彼を見ていた。
しかしだ。王自身はというとだ。
彼女達に何の興味も見せない。そうしてだった。
舞台を見ている。そうしながら傍らにいるホルニヒに話すのだった。
「舞台に専念したいのだが」
「あの方々ですか」
「静かにして欲しいものだ」
こうだ。困った顔でホルニヒに話すのだった。
「今は舞台が行われているのだからな」
「そう思われますか」
「そうだ。彼女達は何をあれだけ騒いでいるのだ」
わからないといった口調だった。
「舞台を見ているのではないのはわかるが」
「陛下をです」
これがホルニヒの言葉だった。
「陛下を御覧になられてなのですが」
「私をか?」
「はい、陛下をです」
また話すホルニヒだった。
「そのうえでなのですが」
「そうなのか」
話を聞いてもだ。それでもだ。
王は何の意も介さない顔でだ。こうホルニヒに述べた。
「私を見てか」
「そうなのですが。何とも思われないのですか」
「詳しくは聞いてはいなかった」
興味がないからだ。
「何か話しているのは聞こえていたが」
「聞こえていたのですか」
「聞いてはいない」
まことにだ。全く興味がないというのだ。
「どうでもいいことだと思っていたからな」
「ではあの方々が何をお話されているのは」
「何の興味もない」
また言う王だった。
「全くな」
「そうなのですか」
「昔からだ」
舞台を見ながらだ。王はホルニヒに話していく。
「私は女性についてはだ」
「どうでもいいというのでしょうか」
「興味を抱かない」
そうだと話すのである。
「いや」
「いや?」
「本来なら抱かなくてはならないのだ」
それはわかっているというのである。
しかしだ。それでもだと話す王だった。
「しかしそれでもだ」
「それはできませんか」
「私は何かがおかしいのだろうか」
王は自分についても話していく
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