兄妹
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スは語る。
私が倒れた後、ガイアスもまた戦場に倒れ、数日生死の狭間を彷徨っていたのだという。生き残った兵士からの報告で、敗北を知ったのだと彼は言った。
「こちらの名立たる将は、全てヴィレントに討たれてしまった。そして……魔王様が討たれた」
祖父が死んだ。この事実を私は複雑な感情を浮かべて聞いていた。結局、最後まで大したことは話せなかった、多くを語らなかった祖父。だがあの人が私に目をかけてくれていたことは事実なのだ。
そして、兄はあのぼろぼろの状態から立て直し、祖父を討つまでに至ったという事実は私を驚かせた。
「最後の最後まで、軍勢では我が軍はベスフルを圧倒していた。だがその全てをまともに指揮できる将がいなくなり、降伏せざるをえなくなったのだ」
せめて私が最後まで動けていれば、と無念そうにガイアスが言った。
「我々は結局、最後までヴィレント・クローティスを侮っていたということだろう。どれほど高く評価したつもりでも、奴が魔王様より強いはずがないと。だから我が軍が負けるはずがないと、誰もが思っていた」
最初から奴の強さを正確に捉えていれば、やりようはあったはずだ、と右手を握りしめ悔しそうに、ガイアスは言った。
「明日にはベスフル軍との講和会議が行われる。魔王領は今まで以上に厳しい立場に立たされるだろう」
衰退していく魔王領。祖父が目指した魔王軍の再興の希望は潰えたようだった。
「それでも俺は魔王領を立て直さねばならん。お前はどうする?」
聞かれて私は考える。
ガイアスと共に魔王領を立て直す?
いや、もうネモもいない、祖父もいない。私がこの場所に残る理由はもうない。
「魔王領を出るよ。私がここに残る理由がないから」
「ではどうするのだ? ベスフルに戻るのか?」
ベスフルに戻る?
いや、それこそあり得ない。1度裏切った私を、あの国が迎え入れるとは思えない。私も戻りたいとも思わない。
私は首を横に振った。
「あの国にはもう戻れない。あそこに私の居場所はないから」
では、どこへ行くのだ? と問われる。
どうすればいいのだろう?
──お前にはまだやることが残っているんだ──
ネモが夢の中で言ってくれたことを思い出す。
私は──
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