兄妹
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。命がけで戦い、せめて傷1つ刻むことができればそれでいい。もうこの世に未練などない。
そして、もし万が一でも兄の命を刈り取るチャンスがあるのなら、その時は容赦なく道連れにしてやるつもりだった。
やれるだけやってみせる。私を鍛えてくれたネモのためにも。
その気持ちが、私を突き動かしていた。
戦場で兄と対峙した私は1本の魔力剣を構え、慎重に間合いを測った。
距離をとって対峙していても、その殺気がビリビリと伝わってくるようだった。
「チェント、もうお前に用はない。今すぐ降参するなら見逃してやる」
先に斬りつけておきながら、この言い草。以前に2対1で勝利したことからくる余裕だろうか?
「私を無視してどこへ行くつもりなの?」
「魔王を殺す。それ以外に目的などない」
だから早く道をあけろ、と言いたげだった。兄は何かに取り付かれたように、血走った眼をしていた。
以前のような冷静で鋭い眼光とは明らかに違う。兄がこうなる理由には心当たりがあった。
「いいのかな? 兄さんの大切な人を殺した相手を野放しにしても」
私の言葉に、兄は目を見開いた。
「お前がシルフィを殺ったのか……!?」
兄は完全に初めて知ったという顔をしていた。スキルドから聞かなかったのだろうか?
あの後でシルフィの死体を見たであろうスキルドが、犯人と私を結び付けられないわけがない。
スキルドは言わなかったのね……。
彼は何なのだろう? 実の妹を殺されてなお、私を庇った? 彼はどこまで甘い人なのだろうか。
いや、今まさに兄妹で殺し合っている私が、兄妹を殺された気持ちを語るほうがよっぽどおかしい。私はそれ以上考えないようにした。
「シルフィは私が殺したの。弱くて、脆くて、あっけなかった」
兄の目を見ながら、私はその時の様子を語った。
兄の驚きの表情がみるみる怒りへと変わっていく。
「少し腕を斬られただけでぎゃあぎゃあ喚くから、次に左足を刺したの。そしたら悲鳴を上げてのた打ち回って。可哀想に、兄さんが近くにいれば死なずに済んだかもしれないのにね」
次の瞬間、寒気を覚えるような殺気と共に、神速の斬撃が私のいた場所を襲った。
私は大きく後ろに飛びのく。兄の剛剣が地面に叩きつけられて、土煙を巻き上げた。
僅かに冷汗が流れたが、私は挑発をやめなかった。
「怒ったの? 兄さんが悪いんだよ。前の戦いの時に私を殺しておけば、シルフィは死なずに済んだのに」
兄は激しい雄叫びを上げた。さらに2度、3度と激しい斬撃が襲い掛かる。私はそのたびに大きく後退した。こんな攻撃を相手の間合いの内側で避けていては身がもたない。
だが、これで兄は魔王より先に私を片付ける気になってくれたようだった。
……行くよ!
覚悟を決めて、この戦いで初めて
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