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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
64話:狭まる網
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もいかぬであろうて。自分たちはやりくりを何とかして戦果を出しているのに、その横で私腹を肥やす財務尚書に、宮中で皇族弑逆を防げぬ宮内省。治安維持組織を抱えながら、局長クラスが麻薬中毒の内務省......。儂が軍部なら、まず当てにはせぬな」

おもわず乾いた笑いが出た。言葉にすれば尚更、事前通達などすればもみ消しにかかると判断されても致し方なかろう。

「すでに宮内尚書からは辞表を預かっております。いま投げ出すわけにはいかぬと、内務尚書は精勤しておりますが、こちらも区切りがついた段階で辞職せざるを得ぬかと......」

「そうなると、後任選びが必要ないのは財務尚書だけか......。大掃除はまとめて済ませたいが、本人から薬物反応が出なかった以上、あやつなら居座るじゃろうな」

儂がそう言うと、子爵はさらに申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

「卿が頭を下げても仕方があるまい。そこでじゃが、事態が落ち着くまで、国務次官も兼任してもらいたい。痛いのはハルテンベルク伯とフォルゲン伯じゃな。地球教とは無関係であろうが、サイオキシン麻薬の密売の事実を隠蔽したとなれば、公職を任せる事は出来ぬ。期待しておっただけに残念じゃな」

「はい。減刑の嘆願が私の方にも来ておりますが、当初の段階で、関係者が極刑になった以上、ここで甘い対応を取れば、軍部とご両家から批判が出ましょう。致し方ないかと......」

「今更ながらの話だが、リューデリッツ伯が爵位を継承した際に今少し歩み寄る態度を取っておくべきだったやもしれぬな。『軍部の政府への採点は厳しい』か。今頃になってこのような形で返ってくるとはな......」

子爵が『何のことか?』とでも言いたげな表情をしていたので、爵位継承の際にあった事の顛末を話した。子爵も渋い顔をしている。まだ共に悩める存在が残っているだけでも良しとすべきか。

「リヒテンラーデ候、軍部でも薬物反応が出たものは更迭されておりますが、比較的安定しております。先ほどお話に出たリューデリッツ伯や、軍務省で高等参事官の経験があるシュタイエルマルク伯なら、どの次官職でも十分にお役目を果たせるのではないでしょうか?」

「それはならぬ。利権の件を除いても今はダメじゃ。帝国の国防体制は万全じゃ。彼らがしっかりと役目を果たしておる以上、せめて混乱ぐらいはなんとか治めてみせねば......。それこそ頼りなしと判断されるじゃろう。今はなんとかして混乱を鎮めることじゃ」

子爵の言い分も分かるが、少なくとも人材が足りないなりに良くやっているとは思わせねば、頭を下げても価値を感じてはもらえぬだろう。なんとか、ここは踏ん張らねばならぬ。

「まあ、司法尚書に内定していたルーゲ伯が前倒しで就任してくれるのが、今の所の唯一前向きな材料じゃ
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