271部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その二十一
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その二十一
「気候は暖かく食べるものもいい。国土も美しい」
「プロイセンもイタリアは好きですし」
「オーストリアも」
「そのことはどの国も一致している」
ドイツにいるならばだ。フランスについてはそうなのだ。
「イタリアはいい国だ」
「はい、しかしそのイタリアもです」
「フランスは手に入れようとしました」
「それでハプスブルク家との戦いになりました」
「そうなりました」
そうだったというのだ。これも歴史だ。
「あの時は何とか追い払うことができました」
「しかし梅毒を流行らせてくれました」
「忌々しいことに」
梅毒はフランス病と呼ばれている。フランスがイタリアに攻め込んだその時にナポリの娼婦達から貰いだ。それが欧州に一気に広まったのだ。
「三十年戦争では同じカトリックでありながら介入し」
「そして最後の最後で戦争に入り多くのものを奪っていきました」
三十年戦争の話になるとだ。余計に怒りがこみ上げる彼等だった。
「あの戦争を混乱させたのもフランスです」
「あの国のせいであの戦争は余計に混乱しました」
「そしてルイ十四世に至っては」
「あろうことか神聖ローマ皇帝になろうとしました」
「神聖ローマ皇帝はドイツの皇帝だ」
伯爵は言い切った。反論の余地がないという口調でだ。
「フランスの皇帝か」
「いえ、違います」
「ドイツの皇帝です」
「何故フランスの皇帝なのか」
「そうではない筈です」
これが周りの言葉だった。誰もが言うのだった。
「陛下はあの太陽王を敬愛しておられますが」
「あの王はとんでもない男でした」
「野心に満ち贅を極め」
「美食と美女をその権勢で集めていました」
「そうした人物だったのですが」
「陛下はだ」
伯爵はバイエルン王がどういった人物かわかっていた。それもよくだ。
「美しいものを見られる方だ」
「では醜いものは」
「それについては」
「それも見られる」
人の美醜もだ。どちらもだというのだ。
「しかしだ。それでもだ」
「醜い部分からはですか」
「何かが違うというのですね」
「あの方は」
「そうなのだ。美しいものは愛される」
それが王の特徴だ。王になってからそれがとりわけ顕著になっている。
「だが。醜いものは」
「それはですか」
「醜いものに対しては」
「どうされるかですね」
「あの方は醜いものを見られると」
どうなるか。伯爵はそれを話すのだった。
「それから目を逸らそうとされる」
「ですね。人の美醜を見分けられるからこそ」
「美しいものを愛され」
「醜いものからは逸らされる」
「そうされますから」
「問題です」
こう話していくのだった。そしてだ。
その中でだ。彼等はだ。
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