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戦国異伝供書
第十五話 中を見るとその二

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「あ奴はじゃ」
「ここでか」
「後ろから何かする前にじゃ」
「切るべきか」
「あえて言うぞ、お主に」
 その親しい羽柴にというのだ。
「あ奴だけは駄目じゃ」
「しかしお主が言うとな」
 ここで丹羽が言ってきた。
「説得力がある」
「だからですか」
「わしもあ奴は信用出来ぬが」
 それでもというのだ。
「やはり軽挙になる様なことはな」
「はい、ですから」
「この度もか」
「まだです」
「見るべきか」
「そうすべきかと」
「しかしですぞ」 
 明智もこう言うのだった。
「若しもです」
「後ろから何かされると」
「厄介なことも事実、そしてあの者は」
「これまでですか」
「そうしたこともしてきたので」
 だからだというのだ。
「ここはです」
「明智殿もそう言われますか」
「消した方がよいかと。若しそれが出来ぬなら」
「その時は」
「あの者の背に常に人を置き」
 そうしてというのだ。
「これまで我等が言っている様に」
「おかしな素振りを見せれば」
「切る、そうすべきかと」
「ううむ、殿もあ奴を信頼しておられるしな」
 場の主である平手も言ってきた。
「それではな」
「はい、それでは」
「あ奴の背に軍勢を置く」
 松永のそこにというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「何かあればな」
「その時は切る」
「軍勢ごとな」
 必要とあればというのだ。
「そうするということでな」
「よいですか」
「わしもその場で滅ぼそうと考えておったが」
 それでもというのだ。
「猿がそこまで言うのならな」
「はい、それがしの考えでは」
 羽柴はさらに言った。
「松永殿はこの度もです」
「当家を裏切らぬか」
「安心してよいかと」
 そうだというのだ。
「あの方は」
「だといいがな」
「はい、確かに公方様を弑逆し大仏殿も焼き」
「主家の三好家も衰えさせたな」
「ですがどうしてもです」
 そこまでの悪事をしたがというのだ。
「悪人にはです」
「思えないか」
「どうしても。目を見ましても」
「目か」
「はい、目をです」
「人は目でわかるというが」
「そうです、その目を見ますと」
 松永のそれをというのだ。
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