268部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十八
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その十八
「ベルサイユもそうだったしサンスーシーもだ」
「確かに。その外観や内装だけでなく」
「装飾もある」
「絵画でも飾られる」
「陛下は美しいものを愛される」
「それではか」
彼等の中に不安が漂う。そしてだ。
その建築を指摘した彼がだ。先に話が出たその場所について話した。
「ベルサイユだが」
「ベルサイユ宮殿、フランスの」
「あの国のか」
「陛下が今行かれているそのか」
「そこにあるあの宮殿か」
「陛下がそのベルサイユに行かれ」
それからだというのだ。王がフランスのその美を知ってからだというのだ。
「それを建築として実現させるとすると」
「どうなるか」
「それか」
「建築は病だ」
また別の一人が言った。
「権力を持つ者の病だ」
「莫大な費用がかかる」
「そしてそれは中々歯止めが利かない」
「そしてその中で贅沢を極めていく」
「それが建築だが」
「しかしだ」
それでもだとだ。こんな話にもなった。その話は。
「今は昔程ではないが」
「人間の世界は豊かになった」
かつてよりもだ。遥かなのだ。
「始皇帝の頃とは違う」
「東洋のあの皇帝の頃とはか」
人類の歴史に名を残す建築愛好家である。万里の長城や己の宮殿、陵墓といった様々なものを建築させてだ。途方もない金と労力を使ったことで知られている。
その皇帝の名前がだ。ここで出たのだった。
「二千年も経ち人類は技術を身に着けた」
「そしてさらなる富もだ」
「建築はむしろベルサイユの頃よりも重荷にはならなくなった」
「だが。それでもだな」
「建築そのものが」
それ自体がだ。問題だというのだ。
「御自身の別荘だけで済めばいいが」
「それがどうなるか」
「それが問題だ」
「どうなるか」
「陛下は建築に興味を持たれているのか」
「そしてそれにどう向かわれるか」
不安がだ。バイエルンを覆おうとしているのだった。
そしてその不安がだ。さらにだった。
「陛下は。止まらないのか」
「誰かお止めできないのか」
それができる者がいるのかどうか。そうした話にもなる。
その話にもなってだ。彼等はだった。
「せめて伴侶がおられれば」
「陛下の妻となられる方」
「王妃がおられれば」
「違うのではないのか」
こうした話にもなっていく。
「そうだな。せめてな」
「陛下はお一人だ」
「人は一人になるとよくない」
「考えも行き詰る」
王の孤独さもだ。問題となるのだった。
「そしてそれがよからぬ結果になる」
「それをお止めできる方」
「その方はおられるのか」
「エリザベート様はそれができたのだが」
今オーストリア皇后となっているだ。彼女はだというのだ。
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