表彰式
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統合作戦本部長に立つのは偶然であり、必然ともいえた。
同盟軍と帝国軍の戦いは、ここ数十年の間は、イゼルローン要塞をめぐる攻防がそのほとんどだ。彼に目立つ戦いの戦績はなく、よってイゼルローンで大敗をすることもなかった。
偶然だと決めることもできたであろうが、過去の経験から見ると実に上手く軍の波を進んでいるようにも見える。
原作でも良く言われていたが、平時ならば優秀な指揮官。
そんな言葉が思いつくが、平時ならば平時で有事に向けての準備が大事であろう。
ましてや、戦略というものは原作通りにほぼ準備で勝敗が決定されているのだから。
そういう意味では、目の前の人物はどうであろうか。
無作為にイゼルローンに挑み続けた凡人。
あるいは――現在まで同盟軍の寿命を延命した人物なのか。
「表彰に先立ち、ご来賓のトリューニヒト国防委員に感謝を述べます」
壇上の上で、コートニーは決して大きくはないゆっくりとした口調で語りだした。
口の悪い者の、冗談として――コートニー元帥が宇宙艦隊司令長官時代には、命令を伝達している間に戦争が終わったらしい――そんな話が伝わっている。
誰が伝えたかは、言わなくてもわかるだろうが。
「このような多くの方々の前で、かように厳粛な式典を挙行できることに深く感謝を申し上げるとともに――」
静かにコートニーが顔を動かした。
その視線は細く、わからないが、こちらを見たのだろう。
「ここに優秀なる同盟軍士官二人に対して、表彰ができるということは、嬉しく――そして、頼もしく思います。さて」
報道陣からのフラッシュが瞬いた。
光を浴びてもわずかに身じろぎもせずに語る様子は、落ち着いているようでもあり、慣れているようでもあった。
全員が立ち上がって直立不動。
真っ直ぐにコートニー元帥を見ている。
「願わくば、諸君らが自由惑星同盟の明るい未来を築くことを祈願いたしまして、挨拶とさせていただきます」
コートニーの礼に合わせて、再び一斉にフラッシュがたかれた。
思い出すのは士官学校に入学した日のことだ。
あの時は、当時学校長であったシトレによって、「明るい未来が待っている」ことを祈願された。そして、今回は「明るい未来を築く」ことを祈願された。
言葉はわずかな違い。
だが、意味は大きく違う。
待つのではなく、作り出せ。
違う人物から言われた言葉に、アレスは小さく唇をあげた。
立場の違いも、そして相手の違いもあったのだろうが――その方が分かりやすいなと。
待つのではなく、作り出す。
そう思えば、自然とアレスはゆっくりと笑みを浮かべた。
+ + +
挨拶が終わり、表彰が終われば、最後にあるのは来賓の挨拶だった。
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