表彰式
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る。
ヤンの背後から、端末を覗き込み。
アレスは息を止めた。
ヤンが入力した映像に映るのは、宇宙でも艦隊でもない。
イゼルローンの内部への侵入手口だ。
そこに至るまでの経緯が、完璧なまでに――そして、アレスの記憶通りに進行している。
沈黙を誤魔化すために、紅茶を飲み込む。
「イゼルローンの攻略を別視点から考えてみた」
「……トロイの木馬ですか」
慎重に言葉を出した、アレスに対しても、ヤンは調子を崩さなかった。
どことなく、嬉しそうな口調だ。
「イゼルローンは難攻不略だ。でも、中からはそうでもないかもしれない」
「ですが。これは敵と味方の能力によるところが大きいですね」
「ああ」
頷いて、ヤンが振り返った。
「成功するのは一パーセントかもしれない。でも、これが完璧に失敗した場合でも、今回の死者の一パーセントよりも少ないだろう」
「でしょうね」
この作戦が失敗した場合は、死ぬのはイゼルローン要塞に侵入した者だけ。
戦艦一つ分の被害にも満たない。
正論に否定する言葉はなく、アレスは紅茶を飲み干した。
「ですが、やるのでしたら、まず司令官の情報を得る必要があると思いますし――そもそも犠牲前提の作戦はよほど切羽詰まらない限り認められないでしょう」
「私もそう思う。第一、要塞に侵入してくれる人がいないと話にならない」
少し残念そうに笑うヤンの表情は、真面目なのかどうか。
未来を知っているアレスでも迷う表情だった。
+ + +
ホテル・カプリコーン。
六十階にもなる巨大な建造物。
その三階部分をぶち抜いた巨大な広間で、同盟軍の表彰式は行われる。
ヤンに先立って、自動運転車で入ったアレスにはフラッシュの光がたかれる。
車にひかれることもいとわない報道魂には敬意を払うが、もう少し命を大事にしてほしいと思う。関係者以外立ち入り禁止の車寄せにつけて、アレスは自動運転車から降り立った。
さすがにこの場所には、報道陣は入ってこられない。
待っていたのは行事を仕切っていた人事部の広報課の女性だった。
士官学校出立ての若い女性だ。
つまりテイスティアの同期。
必死に道を案内しようとしている姿が、あまりにも一生懸命な様子だ。
昨年までは一学年下で一緒であり、よく見れば学校のどこかで見た気もする。
女性士官の先導を受けて、案内された部屋は式典会場ではない。
そこから少し離れた控室だった。
「こちらで少しお待ちください。ヤン中佐が来てから、ご説明があります」
「ありがとう。君は……」
「失礼しました。私はエマ・ローレンス少尉と申します。マクワイルド少佐」
緊張を含んだ敬礼に、アレスも敬礼で返した。
新人の――若
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