267部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十七
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その十七
それはその通りだった。これまでどの音楽家もそこまではできなかったのだ。
あのモーツァルトやベートーベン、そして彼等より遥かに裕福な立場となったロッシーニでさえもだ。そこまではできなかったのだ。
しかしだ。ワーグナーはなのだった。
「それをしようとしている」
「一体どれだけの費用がかかるのだ」
「あの御仁のことだ。また派手なことをするぞ」
「その金はバイエルンの金だ」
「それを好きなだけ使いだ」
「しかも陛下はだ」
また王の話になる。
「そのワーグナー氏でなければならないのだ」
「何故だ」
また疑問の言葉が出された。
「何故陛下はあの音楽家をそこまで」
「そうだな。お后も迎えられないといけないのに」
「その方はどうなるか」
「まだその話も決まっていない」
「同性愛はいい」
王のその嗜好はだ。ワーグナーに比べれば認められるものだった。
「それは金もかからない」
「そうだ、お后さえ迎えて下されば」
「それでいいのだ」
「だが。陛下は女性には」
関心を向けない。どうしてもだった。
「そうした方だからな」
「ワーグナー氏にはそうした感情を持たれていないようだが」
「だが。それでもだ」
「あの御仁が戻ればまた騒動になる」
「どうしたものか」
こう口々に話していく。しかしだった。
結論は出ずだ。遂にだ。一人がこう言うのだった。
「しかし流れは今は陛下にある」
「それならばか」
「陛下が望まれるままになる」
「そうだな」
「陛下の望まれることは」
それは何かという話にもなった。
「どうも最近変わられたのではないだろうか」
「変わられた?」
「変わられたというと?」
「そうだ、変わられたのではないのか」
こうした話も出るのだった。
「微妙にな」
「そうだろうか」
「しかし変わられたというと何が」
「何か変わられたのだ?」
「建築に興味を持たれていないだろうか」
この疑念がだ。起こったのである。
「若しかして」
「建築?」
「建築にか」
「何かそんな気がしたのだ」
こう指摘する者がいるのだった。今の時点でだ。
「気のせいだろうか」
「それはないと思うが」
「そうだ、ないのではないのか」
「あの方は音楽や芸術が好まれるが」
「建築は」
「だがその建築もだ」
それが何かという話にもなった。建築のだ。
「芸術の一つだとすると」
「それに興味を持たれる」
「そうなるというのか」
「そうなってもおかしくはない」
こう指摘されるのだった。王のその気性からだ。
「建築が芸術ならば」
「建築は芸術だ」
このことが話される。建築についてだ。
建築はだ。人類の歴史においてどういったも
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