最後の戦い
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わせたとは言えない。危うい瞬間だった。
一旦大きく距離をとって、赤い魔力剣を右手1本だけ呼び出す。
「来たね。兄さん」
敵中に颯爽と現れては不意打ちを仕掛けてきた兄に、私は言った。
狙い通りだった。
「ヴィレント・クローティスは、士気の要となっている者を見つけては狙い撃ちで倒す。そうやって敵の心を折り、自軍を勝利へと導いてきたのだ」
作戦前にガイアスより言われたことである。
「奴と戦いたければ、目立つことだ。お前を倒さなければ自軍が負けると思わせることで奴を引き付けられる」
それで提案されたのが、竜巻魔法による先制攻撃だった。それだけで、広い戦場にいる兄を引き寄せられるのか? 半信半疑だったが、2発目を放つまでもなく、見事に兄は釣られた。
「……チェント!」
兄は自ら斬りつけておきながら、その相手が私だと今気づいたようだった。
この人は、戦場で味方に仇なす者ならば、誰が相手だろうと見境が無いのだろうか? ひたすらに殺戮を振りまくその姿は、まさに死神そのものだろう。
そして、この兄が討たれれば、ベスフルの希望は失われる。
お互いの剣を構え、私達は睨み合った。
私達兄妹の最後の戦いが、いよいよ始まろうとしていた。
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