最後の戦い
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飛竜にまたがっていた。魔王軍に飼われている青黒い鱗をまとった軍用獣である。
人を乗せて空を飛び、敵の鎧をかみ砕く。種としては絶滅寸前であり、魔王軍内でも乗りこなせるのは少数の人間だけだと聞いている。
ただでさえ大柄なガイアスがこれに跨ると、まるでおとぎ話の巨人のような威圧感がある。
「では、始めるとしよう」
ガイアスは飛竜に跨ったまま、持っていた弓を敵軍に向けて構えた。それは身の丈を超える巨大な弓だった。太く、そしてその色から木製ではなく、何らかの金属が使われていることがわかる。
とてつもない強弓であろう。その弦が引かれると、弓の軋みと共に筋肉の軋む音まで聞こえてくるようだった。
普通の弓なら、斜め上に撃っても届かないこの距離。だが、ガイアスは殆ど直線に矢を放った。
風切り音と共に矢が直進する。遠くで騎兵が派手に吹っ飛び、倒れるのがわかった。
魔王軍に歓声が、ベスフル軍にどよめきが起こった。
仲間を討たれた騎兵たちが、一斉にこちらに突進してくるのが見える。睨み合いは終わり、いよいよ戦いの火蓋は切られたのだ。
「ふん。矢を恐れて後退する可能性も考えたが、敵もそこまで臆病ではないか」
言いながら、2発目の矢を放つ。強弓から放たれた矢は、今度は2人の騎兵を巻き添えにした。恐ろしい威力。
敵との距離が縮まったことで、さらに威力を増しているのだ。
ベスフル軍は、激情に任せて馬を走らせたため、騎馬隊だけがまるで槍のように縦長に突出した状態になっていた。
ランスを構え、声を上げて突進してくる兵士達。それを見ながらも、魔王軍の部隊はまだ動かない。
「任せたぞ」
私に言って、ガイアスと周囲の味方が下がる。私だけが部隊から少し飛び出したような形になった。
ガイアス達が下がったため、ベスフル兵たちの目標は自然と突出している私に向けられる。まだわずかに遠い。ギリギリまで引き付けなければ。
馬の駆ける音が徐々に大きくなってくる。鎧の擦れる音、殺気立った敵兵の声。まだまだ、もっと引き付ける。
今──っ!!
「はあぁぁぁぁっ!!」
先頭の騎馬が後数メートルまで迫ったところで、私は両掌を前にかざした。
これはネモから教わった、敵を直接攻撃する範囲殲滅魔法。
空気が揺らいだかと思うと、両掌から轟音を立てて、赤色の暴風が一直線に生まれた。
「な、なんだぁーっ!?」
大人の身長の倍以上の直径を持つ円筒形の赤い竜巻は、横向きになって騎兵を紙切れのように吹き散らしていく。敵兵と馬の怒号と悲鳴が混ざって聞こえた。
いや、吹き散らすというより飲み込むと言った方が正しいか。竜巻は地面を筒状に抉り取り、直線に並んだ兵を錐揉みさせながら、まっすぐ後ろに押し込んでいく。
当然、それは後ろを走っていた兵士も全て巻き込
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