最後の戦い
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被ることになった。
戦況の隠蔽を手伝った者には特に厳しい処分が下され、他の者も、地位剥奪、降格などの処分を受ける。
そして、私の番が回ってきた。
「チェントよ」
祖父の声が響く。その声は依然として大きな威圧感を伴っていたが、私は特に委縮することはなくなっていた。
自分でも不思議だったが、色々あり過ぎて、感覚が麻痺してきたのかもしれない。
「はい」
跪いた状態で顔を上げ、私は答えた。
「ネモのことは気の毒であったな」
「は……、いえ、お気遣い、痛み入ります」
早速、処分が下されると思っていた私は、祖父のその言葉に少し面食らった。
「ネモが討たれた直後だというのに、貴様は単独で敵本陣に切り込んで損害を与えたそうだな。その働きは称賛に価する」
周囲がざわめいた。周りの者たちも当然、私にも何らかの処罰が下されると思っていたからだ。
それに、本陣を攻めたという事実を、私は誰にも報告していなかった。
祖父がなぜそれを知っているのだろうか?
私に本陣の地図を渡してきた兵士を思い出す。魔王の命令で来たと言っていたあの兵士。私の動向を見張り、祖父に報告する役目も担っていたのかもしれない。
「いえ、その時の本陣には殆ど敵が残っていませんでした。大した戦果にはなっていません」
私は本心からそう言った。事実、直後に砦は落とされたのだから、私の与えた損害は大局には何も影響を与えていないことになる。
「だが、結果的に負け戦に関わった貴様に、恩賞を与えることはできん」
祖父は言ったが、私には恩賞など興味のない話だった。
ネモのいないこの魔王領で、新たな地位など何の魅力も感じない。
「もっとも、貴様の方も恩賞などは求めていないようだがな」
まるで、そんな私の心を見透かしたように祖父は言った。
今の私が求めるものは──
「ネモの仇、兄ヴィレントとの再戦。それが貴様の望みか? チェントよ」
「……はい!」
私は祖父の鋭い眼光を真っ向から見据え、ハッキリと答えた。
祖父はその言葉を聞くと、満足そうに笑い、頷いた。
「ヴィレントとの戦いで一度は敗れたと聞いたが、勝算はあるのか?」
「それは……わかりません」
私は正直に答えた。
「正直だな。まあよかろう。ガイアスよ」
「はっ」
祖父の玉座の隣に立っていた大男──ガイアスが答える。
ガイアスは、私が初めてこの場所を訪れた時から、いつも祖父の隣に立っていた。この部屋にいる中でも飛び抜けて大きく、その体格は魔王をも超えていた。
「チェントをお前の部隊に入れてやることはできるか?」
「はい、問題ありません」
ガイアスの答えに祖父が頷く。
魔軍総長ガイアス。彼はそう呼ばれていた。魔王軍においてのナンバー2と聞いている。
魔王城に滞在する
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