暁 〜小説投稿サイト〜
Evil Revenger 復讐の女魔導士
最後の戦い
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
被ることになった。
 戦況の隠蔽を手伝った者には特に厳しい処分が下され、他の者も、地位剥奪、降格などの処分を受ける。
 そして、私の番が回ってきた。
「チェントよ」
 祖父の声が響く。その声は依然として大きな威圧感を伴っていたが、私は特に委縮することはなくなっていた。
 自分でも不思議だったが、色々あり過ぎて、感覚が麻痺してきたのかもしれない。
「はい」
 跪いた状態で顔を上げ、私は答えた。
「ネモのことは気の毒であったな」
「は……、いえ、お気遣い、痛み入ります」
 早速、処分が下されると思っていた私は、祖父のその言葉に少し面食らった。
「ネモが討たれた直後だというのに、貴様は単独で敵本陣に切り込んで損害を与えたそうだな。その働きは称賛に価する」
 周囲がざわめいた。周りの者たちも当然、私にも何らかの処罰が下されると思っていたからだ。
 それに、本陣を攻めたという事実を、私は誰にも報告していなかった。
 祖父がなぜそれを知っているのだろうか?
 私に本陣の地図を渡してきた兵士を思い出す。魔王の命令で来たと言っていたあの兵士。私の動向を見張り、祖父に報告する役目も担っていたのかもしれない。
「いえ、その時の本陣には殆ど敵が残っていませんでした。大した戦果にはなっていません」
 私は本心からそう言った。事実、直後に砦は落とされたのだから、私の与えた損害は大局には何も影響を与えていないことになる。
「だが、結果的に負け戦に関わった貴様に、恩賞を与えることはできん」
 祖父は言ったが、私には恩賞など興味のない話だった。
 ネモのいないこの魔王領で、新たな地位など何の魅力も感じない。
「もっとも、貴様の方も恩賞などは求めていないようだがな」
 まるで、そんな私の心を見透かしたように祖父は言った。
 今の私が求めるものは──
「ネモの仇、兄ヴィレントとの再戦。それが貴様の望みか? チェントよ」
「……はい!」
 私は祖父の鋭い眼光を真っ向から見据え、ハッキリと答えた。
 祖父はその言葉を聞くと、満足そうに笑い、頷いた。
「ヴィレントとの戦いで一度は敗れたと聞いたが、勝算はあるのか?」
「それは……わかりません」
 私は正直に答えた。
「正直だな。まあよかろう。ガイアスよ」
「はっ」
 祖父の玉座の隣に立っていた大男──ガイアスが答える。
 ガイアスは、私が初めてこの場所を訪れた時から、いつも祖父の隣に立っていた。この部屋にいる中でも飛び抜けて大きく、その体格は魔王をも超えていた。
「チェントをお前の部隊に入れてやることはできるか?」
「はい、問題ありません」
 ガイアスの答えに祖父が頷く。
 魔軍総長ガイアス。彼はそう呼ばれていた。魔王軍においてのナンバー2と聞いている。
 魔王城に滞在する
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ