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緑の楽園
第四章
第45話 松代大本営
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』である本土決戦、そして一億玉砕。
 それを果たさせてしまうということは、住民全員が地下都市を枕に討ち死にするということを意味する。

「まあ、その役割、果たさせる気はないですけどね」

 神は少し意外そうな顔になった。

「ほう。何か考えでもあるのか?」
「いえ、まだないですけど。これから陛下や参謀の方々と一緒に考えます。できるだけ被害を出さないようにする――それがこいつとの約束です」

 俺は神にそう言うと、不安そうに指を動かしているタケルの肩に、なんとなく手を回した。

「……お前の好きにするがよい。わたしはその『組織』とやらが解散し、歴史の流れが正常になれば目的は達成できる。お前については、結果を出しさえすれば、そのプロセスは問わぬ。
 仮にお前が二万人を全員虐殺して解決したとしても、わたしの仕事に支障がでるわけではない。むしろ、現在の世界の文明レベルを考慮すれば、そのほうが楽かもしれないな」

 さて、お前ら人間たちのお手並みを拝見といくか――。
 なんとなく、そんな言い方をされているような気がして。少し反抗心のようなものが湧きあがってくるのを感じた。

「もちろんそんなことはしません」



 タケル、神、クロとともに会議室を出る。
 と、そのとき。
 一つ疑問点を思いだしたので、廊下を歩きながら質問してみることにした。

「神さま、もうひとつ質問」
「なんだ」
「神さまだったら、その松代大本営跡に地下都市が作られたということもお見通し、というわけではなかったんですか?」

 神を見上げる。
 いつもの無表情だ。

「お前はわたしが地中まで覗けるとでも?」
「あー……地中は無理な感じですか。なるほど。でもその言いかたなら、地上は見えるということなんでしょう? 本当に地下都市の造営や『組織』について察知することはできなかったんですか?」

「不可能だ。地上の人間の細かい動きを掴めるほど倍率を拡大すると、視野も狭くなる。
 あらかじめ不穏な動きがあるとわかっており、しかも場所に目星がついていれば、そこを拡大すればよいのだが……。そうでない場合はどこを拡大すればよいのかわからない。
 様子を確認するために地上を適当に拡大することもあるが、それでたまたま異変を発見する可能性などほぼ0パーセントだろう」

 なるほど。神はグーグルアースのような感覚で地上を見ているのだ。
 確かに、それでは厳しい。「最も拡大しないと発見できない何か」を探し当てるというのは無理だと思う。

 神の仕様≠ノついては、まだ他にも確認したいことはたくさんある。だが、また「お前が知る必要は無い」などとのたまわれそうな気がしたので、それ以上は追及しなかった。



 部屋に戻った。
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