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緑の楽園
第四章
第45話 松代大本営
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た巨大な地下坑道である。

 昭和十六年より始まった太平洋戦争。日本は、アメリカのハワイ真珠湾への奇襲に成功。その後破竹の勢いで戦線を拡大し、太平洋の広い範囲を制圧した。

 しかし、その勢いは長くは続かなかった。昭和十七年六月のミッドウェー海戦に敗れて以来、戦局は転がり落ちるように悪化していくことになる。
 戦争継続のために設定した戦線維持ライン「絶対国防圏」も、マリアナ沖海戦に完敗してサイパン島を失ったことにより、破れてしまう。
 その結果、東京は戦略爆撃機B−29の航続圏内に入ってしまうこととなり、空襲に晒されるようになった。

 ちょうどそのころに着手されたのが、松代への大本営移転計画である。
 軍部は長野県松代にある、象山、舞鶴山、皆神山という三つの山の下に、巨大な地下施設を造り始めた。
 その大きさは実に四万三千平方メートルの大地下要塞になる予定であり、終戦時にはすでに九十パーセントが完成していたという。



 神の話はわかりやすかったのだが、タケルは太平洋戦争も教わっておらず、ミッドウェー海戦だのマリアナ沖海戦だの言われてもチンプンカンプンである。そのため、俺のほうで途中に補足をはさみながら聞いてもらった。
 俺の知識も非常に怪しいわけだが、特に神から訂正されなかったので、そう間違ってはいなかったと思う。

 しかし、だ……。
 松代大本営、俺はそのようなものがあったとは知らなかった。

「そんな坑道が存在していたなんて、全然知りませんでしたが」
「それはお前が歴史を勉強していないからだ」
「……」

 バッサリ斬られた。
 中学校や高校の授業では、近現代史については教わった記憶があまりない。
 教科書の後ろのほうなので、カリキュラムの都合で削られたのかもしれない。
 ……と、いちおうそのような言い訳はあるのだが。

 教科書も資料集もあるわけだから、自分で勝手に読めばよいだけの話だ。
 俺はそこまで熱心ではなかったどころか、授業中も頻繁に寝ていた。言い訳無用だろう。

「あの。俺、そのへんはおっしゃるとおり、全然勉強してないので、トンチンカンな疑問かも知れないんですが……。普通、首都が直接攻撃されるって、もう戦争も終わりということですよね? そんなときに首都を遷都するわけでもなく、軍の本拠地だけを松代に移して、いったい何がしたかったんでしょう?」

「本土決戦だ」
「本土……決戦?」
「そうだ。当時の日本は、降伏をせずに『一億玉砕』を唱え、全土を焦土化して戦う予定だった。そのために、軍の司令部や放送局など、軍事の上で重要な機能だけを、松代の地下要塞に移そうとした」
「……」
「わたしは当時、一人の人間から報告を受けていた。『軍艦も動かせず、飛行機も飛べない、武器も
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