第二章
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「マルシェちゃん大丈夫?」
「何が?」
「いえ、色々揉めごとに巻き込まれたりするから」
様々なトラブルのことを言うのだった。
「それにお父さんとお母さんいなくてお兄さんも」
「大丈夫よ」
マルシェはその友人に微笑んで答えた。
「私は」
「そうなの?」
「ええ、だってね」
「だって?」
「兄さんと一緒に暮らせて」
災害や反政府組織のことは誰にも言っていない、災害のことにしても知っているのは兄だけである。
「それだけでね」
「充分なの」
「二人で暮らせて」
それでというのだ。
「私は充分だし色々あっても」
「それでもなの」
「乗り越えられるから」
今のマルシェにとってはだ。
「だからね」
「大丈夫なの」
「ええ」
災害が起こって兄と再会するまでにあったことを思えばとだ、マルシェは心の中で思ってそうして言うのだった。
「全然ね」
「だったらいいけれど」
友人もそれならと思った、それでマルシェにこのことを言うことはしなくなった。そしてその後で兄が入院してリハビリに励んでいるところに行ってだった。
兄のリハビリを懸命に手伝い励ました、兄はそんな妹に顔を向けて言った。
「いつも有り難う、けれど」
「けれど。どうしたのかしら」
「いつもどうして笑顔なのか」
自分に向けている表情がというのだ。
「僕にはわからないよ」
「だって。兄さんが生きていてくれてるから」
「だからなんだ」
「私は充分幸せなの。ずっと願っていたから」
兄が生きていて再会出来て二人で再び日本で暮らしたい、マルシェが反政府組織にいた間常に思っていたことだ。
「それが適ったから」
「それでなんだ」
「幸せだから」
それ故にというのだ。
「もうね」
「いつも笑顔でいられるんだ」
「そうよ。兄さん少しずつでも」
それでもというのだ。
「よくなっていってるから。だからね」
「頑張っていけば」
「絶対に完治するから」
「それじゃあ」
「また明日も来るわね」
リハビリに励んでいる兄のところにというのだ、今のマルシェは実際にいつも笑顔だった。
辛い時いつも思っていた願いが適った、そしてもう辛い時に嫌で嫌で仕方なかったことをしなくてよくなった、それでどうして幸せでないのか。
そう思っているからこそマルシェはいつも笑顔でいられた、彼女だけにしかわからないことだが彼女にとってこれ以上はないまでに大事なことだったから。ついつい笑顔になって幸せを感じずにはいられなかったのだ。
充分な幸せ 完
2018・10・17
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