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レーヴァティン
第七十五話 霧の都その四

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「そこから凄く美味しいものにしてくれるかもだけれど」
「そのまま出したらか」
「どうにもならないよ」
「そんなに酷いんだな」
「イギリスに美味しいものは」
「ないか」
「腕の立つ人がちゃんと料理して味付けしたら」
 そうすればというのだ。
「いいみたいだけれど」
「それはつまりあれだな」
 ここまで聞いてだ、正が言ってきた。
「イギリスのシェフや奥さん、あと単身赴任の旦那さんの腕がまずいんだな」
「そうなるかな、まあどっちにしてもね」
「イギリスに美味いものはないか」
「多分メニューに問題はなくて」
 そしてというのだ。
「最近じゃ素材もかなりいい筈なんだよ」
「それでまずかったんだな」
「アメリカは結構いけたよ」
 この国も料理は言われることがあるがというのだ。
「ハンバーガーだってね」
「そうなんだな」
「けれどイギリスは駄目だったよ」
「それはやっぱりな」
「作っている人が問題だね」
「あのドリトル先生も言ってたしな」
「イギリスから来た人だね」
 一行が通う八条大学医学部の教授だ、イギリスから日本に招かれて教鞭を手にしている。ただし鞭といっても実際に鞭は持っておらず暴力とも無縁の人だ。
「そういえばあの人日本のお料理絶賛してるね」
「ああ、イギリスはよっぽどな」
「料理が悪いってことだね」
「そうだな、それでこの島のロンドンもか」
「そんなのかな」
「まさかと思うがな」
「けれどロンドンっていうと」
 即ちイギリスの首都だ、尚イングランドがこの街を都にしてから長い。
「どうしてもね」
「そのイメージがあるか」
「まずいっていうね」
「まあそれが出てもな」
 正は淳二にあらためて言った。
「食うしかないからな」
「何かまずいもの食べたさになってきたね」
「そういえばそうだな」
「うん、けれどね」
「それでもな」
「食べるしかないんだね」
「ああ、そうなるな」
 正の返事はある意味達観しているものだった。
「けれどな」
「食べないとわからないし」
「行こうな、ロンドン」
「それじゃあね」
 こうした話もしてだった、一行はこの島のロンドンにも来た。霧の都というだけあって霧に深く包まれた中に石造りの世界があった。
 その中の橋を渡ってだ、久志は言った。
「これがあの橋か」
「ロンドン橋ですね」
 夕子もこう応えた。
「あの」
「そうだよな」
「この橋は落ちへんな」
 美奈代は橋を渡りつつこう言った。
「流石に」
「あの歌かよ」
「マザーグースのな」
 ロンドン橋落ちた、の歌である。この歌はマザーグースの中でもとりわけ有名な歌の一つでありよく歌われる。
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