第一章
[2]次話
ハヤシライスよ永遠に
林来子はハヤシライスの妖精である、その為ハヤシライスについては絶対の愛情を持っていて布教に務めている。
その彼女がある商店街の洋食屋の親父彼女にとって馴染みの人物である彼に対して不満そうに言っていた。
「私いつも思うんですが」
「カレーと比べるとな」
「ハヤシライスって人気ないですよね」
「人気はあるんだよ」
親父はこれ自体は否定しない、言いつつ店のカウンターに座っている来子にそのハヤシライスを出す。
「うちの店でも人気あるよ」
「それはそうですよね」
「ただね」
「カレーと比べると、ですね」
「カレーは圧倒的だからね」
それ故にというのだ。
「やっぱりね」
「負けてますか」
「来子ちゃんには悪いけれどね」
「悪くないです」
来子はスプーンを手に取りつつ答えた。
「別に。ただ」
「カレーライスが強過ぎるんだよね」
「向こうあれですよね」
そのカレーのことをだ、来子はさらに話した。
「チキンカレー、ポークカレー、シーフードカレー、野菜カレーってあって」
「カツカレー、ハンバーグカレー、ソーセージカレーもあるね」
「あと海老フライカレーも」
このカレーもあるというのだ。
「最近スープカレーもあって」
「専門店も多いしね」
「カレー丼もありますよ」
来子は和食も出した。
「ハヤシ丼なんてないですし」
「お肉もね」
「はい、基本牛肉です」
ハヤシライスの中にあるスライスされた牛肉を食べつつの言葉だ、その牛肉を。
「鶏肉や豚肉は」
「あまり使わないね」
「カレーはそういうのも使えて」
「その分も強いね」
「本当にずるい位強いですよね」
ハヤシライスの妖精である来子もこのことを認めるしかなかった。
「そのカレーとどう対していくか」
「来子ちゃんの頭の痛いところだね」
「そうなんです、私が生まれてから」
即ちハヤシライスが世に出てからだ。
「明治の頃から考えてますけれど」
「洋食屋には大抵あるけれどね」
メニューとして存在はしているのだ。
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