260部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その十
ホルニヒにだった。こんなことを述べた。
「私が見ているものとオットーが見ているものは全く違うのだろう」
「陛下が御覧になられているものは美であり」
「オットーは。狂気を見ているのか」
「それは」
「その中にいるオットー。一体どうなってしまうのか」
弟のことを気遣いだ。その言葉を止められなくなっていた。
彼について考えることもだ。そうした話をしてだった。
王はだ。あらためてホルニヒに述べた。
「ではだ」
「では?」
「行こうか」
他の場所にだというのだ。
「他の場所に行こうか」
「他のですか」
「ベルサイユはこれで終わりだ」
王は話した。もうベルサイユから去るというのだ。
そうしてだ。行く場所はだ。
「パリに入るか」
「パリにですか」
「パリも随分変わったという」
フランスの帝都だ。この街は今の主ナポレオン三世になってからかなり変わった。それまで雑然とし道が入り組んでいた。だがそれが整然となり整った街並みになりだ。そうして緑が多くなっていたのだ。
その街にだ。王は向かうというのだ。
「そこに入ろう」
「では今から」
「そうだ。行こう」
こうしてだった。王はパリにも入るのだった。そこは道が中心から放射状に広がりだ。その道に沿って見事な建物が並んでいる。
そして道の端と端には木々が並んでいる。そのうえだった。
街を行き交う人々はそれぞれの自信の服を着てそうして闊歩している。店では若者達が食事やワインを楽しんでいる。レストランには富裕の者とその若い愛人やツバメが共にいる。そういったものを見てだ。
王はだ。こう言うのだった。
「こうしたものはいい」
「宜しいのですね」
「そうだ。しかしだ」
「しかし?」
「見るのだ」
ホルニヒにだ。足元を見るように話した。そこはだった。
犬の糞やゴミが落ちている。それはかなり汚い。それを見てだった。
王はだ。ホルニヒに話すのだった。
「これもまたパリなのだ」
「道は汚いというのですね」
「期待してこの街に来て。確かに見たが」
「それでもですか」
「そうだ。これはよくない」
その汚い道を見ての言葉だった。
「欧州の街は何処もかつては道の端にあらゆるものを捨てていましたが」
「それと同じだというのですね」
「そうだ。これでは同じだ」
こうだ。残念な顔で話すのだった。
「街も全てが整っていなくてはならない」
「では城もやはり」
「そうだ。全てを美しくだ」
完璧主義をだ。ここで見せたのである。
「そうしなければならない」
「左様ですか」
「まさかパリでそれを見るとは思わなかった」
王はまた残念な顔で述べた。
「どうもな」
「あの、陛下」
落ち
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