第四章
第44話 地下都市
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にありがたく、そして嬉しかった。
「お久しぶりです。あの、今回もそうだったようですが、町を出たあとも色々気にかけてくださっていて……ありがとうございました。俺……ず、ずっとお礼が言いたくて……」
再会したときは泣かないように、とは思っていた。
でも、無理だった。
本当は、町長にもっと言わなければならない感謝の言葉が、たくさんある。
なのに、たくさんありすぎて、詰まってなかなか出てこなかった。
「いやいや、口しか動かしていない私への礼は要らないよ。まあ、でも君が言っていた心掛けは大切なことだ。周囲に感謝する気持ちがないと、天狗になってしまうからね。これからもその気持ちを大切にするといい」
「……はい」
町にいた頃、たまに会ったときにくれていた町長のアドバイスは、とても貴重なものばかりだった。
前に女将軍から、俺は「白紙」だと言われたことがある。
もし白紙であれば、きっとまだいっぱい書き込める余地があるはず。今回の町長のアドバイスも、しっかり書き込んでおこう。
「説得はうまくいったのか」
町長の後ろにいた神が、話しかけてきた。
よい雰囲気だったのに、神の無機質な声で少し醒めた気がした。
「ええ、みんなのおかげで。まあなんとか」
「そうか。よくやってくれた」
「ありがとうございます……なのですが、もしかして俺、あなたにハメられました?」
「最も成功率が高いであろう者に、仕事を依頼する――それはいつの時代でも当然のやり方だ。ハメたわけではない」
「できれば、突然難題を振られた側の気持ちもご考慮いただけますと」
「それはお前の中での問題だろう。わたしや他の人間たちには関係のないことだ」
「ソーデスカ」
こちらとしては、少し非難の気持ちを込めたつもりだった。
だが神はまったく動じる気配を見せない。さらっと流されてしまった。
「で。もう夜なのに何をやっていたんです?」
神に、少しだけ気になったことを聞く。
「町長から町政についての相談を受け、助言をしていた」
「え? そうなんですか?」
――これはまた意外な。
思わず、町長のほうに確認の視線を送ってしまった。
町長は穏やかな表情のまま、神を一度見てから、俺に答えをくれた。
「そうだよ。ありがたい話をたくさん頂戴した。パーティのときは挨拶しか出来なかったからね」
……。
この神さま、俺以外の人間に対しては親切だったりするのだろうか?
***
この時代の人間にとっては、大昔。
俺の時代の人間にとっては、未来。
世界中を巻き込んだ戦争が起こった。
戦争とは関係なかったはずの国も、戦争終結後に力を持つことを警戒され、攻撃の対象と
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