259部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その九
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その九
「暴虐は好まない」
「それは確かに」
「しかし女性の目で何もかもを見てしまう」
そのことにだ。気付きだしているのだった。
「何故かわからない。私は何もかもをだ」
「女性のその目によって」
「戦いを嫌う」
それは王の特質でもある。
「そして女性を愛せない」
「それが何故かをですか」
「わからない。私はやはり」
「やはり?」
「狂気に陥っているのではないだろうか」
ヴィッテルスバッハ家に言われているだ。その遺伝の話だった。
「代々受け継がれてきた。その」
「いえ、それは」
「違うか」
「陛下は狂気に陥ってなぞいられません」
それはないとだ。ホルニヒは王に強い声で話すのだった。
「それは決してです」
「そうなのだろうか」
「狂気に陥っていられるならばです」
それならばだ。どうかと話していくのだ。
「何故こうして私に語られるのでしょうか」
「そなたにか」
「その美について」
このことをだ。指摘してみせたのである。
「フランス、そしてワーグナー氏の」
「その二つを合わせた一つの美」
「それを築かれるのですね」
「それが私の運命だ」
「それを言われる方がどうして狂気に陥っておられるのでしょうか」
切実な顔になっていた。まさにだ。
「ですからそれは」
「気にすることはないか」
「口さがない言葉は何処にでもあります」
「言葉はか」
「はい、言葉とはそういうものですから」
だからだとだ。ホルニヒは王に話すのだった。
そのうえでだ。彼はだ。
その王の目を見てだ。そうしてさらに話した。
「陛下のその目は」
「私の目か」
「常にあの騎士を御覧になられていますね」
「そうだな。彼を」
その彼こそがだというのだ。
「その御覧になられているものこそがです」
「私が狂気でない証か」
「それは清らかなものですから」
「狂気に陥っている者はそうしたものを見ないのか」
「何か。奇怪なものを見ているのでしょう」
それが狂気だとだ。彼は捉えていた。
そしてそれを見ている者は誰なのか。それを話したのは王だった。
王はだ。悲しい顔になりだ。ここでホルニヒにこう話した。
「オットーだが」
「弟殿下ですか」
「あれは。何を見ているのだろう」
「殿下の御覧になられているものですか」
「そう、それは何だろうか」
こうだ。王は言うのだった。
「何なのか」
「それはわからないのですか」
「そうだ、私にはわからない」
弟のことをさらに考えてだった。王は話していくのだった。
「彼は何を見ているのか」
「それは一体」
「私にはわからないのだ」
首を横に数回振っての言葉だった。
「恐ろしいものを見て。それに怯
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