第6章:束の間の期間
第177話「異質なナニカ」
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なるほど……気持ちはわかるわ」
〈君の前世も似たような事になったからね。こちらの方が得体が知れない分、精神的に辛いと思うけど〉
鈴は、前世で鵺に殺され、自由を封じられてその時の想いを利用された事がある。
霊体として分離する前は、鵺と同化していたようなものだった。
そのため、自分が自分じゃない感覚は経験していた。
その事もあって、鈴は奏の状態が概ね理解できた。
「これは……どうしようもないわね。家族であればもしくは……って所ね。時間を掛けて落ち着かせるしかないわ。その点では貴女の判断は間違ってないわね」
「……そう、なんだ」
奏に対してしてやれる事はないと鈴は断言する。
実際、手の施しようがないため、このままを維持するしかない。
ちなみに、この会話は奏に聞かせないように司が耳栓代わりの魔法を使っていた。
「にしても“天使”ね……」
「推測っていうか、見た目がそれっぽいだけで、実際は何かわからないんだけどね……」
鈴もなのはと奏の言動がおかしくなった瞬間は見ていた。
あの時の異様な雰囲気を鮮明に覚えており、つい思い出して考えてしまう。
「……戻ったぞ」
「帝君」
「……相当、やばそうだな……」
そこへ、帝が戻ってくる。
奏が司に縋りついて震えているのを見て、危うい状態なのを即座に理解した。
「とりあえず、私の魔法で安静にしやすいようにしてるけど……」
「魔力は大丈夫なのか?」
「ある程度回復したからね。人一人分なら何とか……でも、きついかな……」
司の魔力はまだ全快していない。その状態で魔法を維持している。
普通なら立ち眩みを起こすような状態を続けている。
頼るだけでなく、頼られるようになる。その覚悟で、司は耐えていた。
だが、それは長く持たない。少しでも気を抜けば術式が瓦解するだろう。
「……この場になのはがいなくてよかったと言うべきか……」
「なのはちゃんも奏ちゃんと同じ可能性があるもんね……」
「奏の事は……あいつに任せるべき……いや、今は無理か……」
帝はつい優輝を思い浮かべたが、その優輝を今は頼れない。
同時に、帝も何かと優輝に頼っているのを自覚した。
「頼られるようになるって決意しても、これじゃあね……」
「早計だった……ってことか……」
魅了を解こうと奮い立っていなければこうならなかった。
そんな考えが司の脳裏に過る。
実際は連鎖的に事態が続いただけで、その考えは早とちりに過ぎない。
「なに?そんな事考えてたの?」
「そんな事って……ずっと頼ってばかりだったから……」
「……馬鹿ね。だからって決意してすぐに行動に起こしても躓くだけ
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