第十四話 北陸へその八
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「あの坊主達の操り人形です」
「そうした有様か」
「勘十郎様が殿に言われているとか」
蒲生もここで平手に話した。
「崇伝と天海については」
「公方様をじゃな」
「陰で操る様な」
「そうしておるか」
「それで勘十郎様も何とかです」
「あの二人の坊主達をか」
「成敗したいとお考えの様ですが」
義昭を惑わす、そうしていると見てだ。
「しかし」
「公方様がか」
「庇われているとのことで」
「どうにも出来ぬか」
「もう幕府はです」
林がこう言ってきた、彼も都によく行き詳しいのだ。
「朝廷からも民からも」
「支持がないのう」
「都は最早我等のものになっていますが」
それでもというのだ。
「それでもです」
「公方様はそのことをご存知ないか」
「最早目に見えない様になっておる様です」
「それでか」
「どうもです」
「当家に対してか」
「武を以て」
まさにそうしてというのだ。
「向かおうとされているとか」
「困った方じゃな」
「確かに幕府は今何の力もありませぬ」
「しかし都におられるからな」
「権威もありますので」
「だからな」
その義昭が動けばというのだ。
「厄介であるのう」
「ですな、まことに」
「若しもです」
ここで言ったのは羽柴だった、表情はいつも通り剽軽であるがその剽軽さも普段より薄いものになっている。
「同時に動けば」
「それらの家々なりがか」
「当家は恐ろしいことになりますな」
「東から武田、北から上杉、西に毛利」
滝川が言ってきた。
「北条も控え中に本願寺と幕府」
「これは大変ですぞ」
羽柴はまた滝川に話した。
「実に」
「そうじゃな、一斉に動けばな」
「そうした諸勢力が」
「悪いことには悪いことが続くもの」
佐久間の言葉だ。
「そうなるやもな」
「むしろそう動くのではないか」
森は佐久間の言葉に目を鋭くさせて言った。
「公方様や顕如殿になったつもりで考えてみれば」
「そうするな、やはり」
平手が森の言葉に応えた。
「わしが公方様や顕如殿ならばな」
「諸大名に文を送り」
「兵を挙げる時を申し伝えてな」
「そうしてですな」
「自身も立ち上がる」
「もう一方と呼応し」
幕府なら本願寺、本願寺なら幕府とというのだ。
「一斉にな」
「内外でそうして一気に攻められると」
どうなるかとだ、佐々が言ってきた。
「これ程厄介なことはないぞ」
「全くじゃ、果たしてどの敵から倒すべきか」
前田も言う。
「考えどころじゃ」
「どれか一つでも全力を以て向かわねば」
平手もまた言った。
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