257部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その七
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その七
「青なのだ。ワーグナーは」
「白や銀ではないですか」
「それもある」
その色もだというのだ。あるというのだ。
「ローエングリンの色だ」
「あの騎士のですか」
「無論そうした色も好きだ」
王は清らかな色を愛するのだった。そこに想うものがあるようにだ。
その話をしていき庭を見てだ。王は庭にある薔薇を見た。
白い薔薇が咲いている。その薔薇を見てだった。
彼はだ。ふと話をするのであった。
「いいだろうか」
「はい」
「この薔薇だが」
「白い薔薇ですね」
「私は薔薇も嫌いではない」
花自体がだ。好きなのだ。
その花々を見てだ。王は話していくのだった。
「だが。薔薇には青はないな」
「そうですね。青い薔薇は」
「それはない」
こう話すのだった。
「薔薇と青は相容れないものだな」
「青い薔薇、それは」
「不可能という意味だ」
そういう意味がある。それはその通りだった。
「今は存在しない」
「今はですか」
「だが。やがてはだ」
王は遠い目になってだ。そうしてホルニヒに話した。
「人はその青い薔薇を生み出すだろう」
「不可能だったものをですか」
「その通りだ。青い薔薇は何時か生み出される」
「魔術の様な話ですね」
「魔術ではない。科学によってだ」
それによってだとだ。王は話す。
「人は青い薔薇も生み出すだろう」
「陛下はそれを期待されているのですね」
「人は。確かに醜くもある」
そのことは嫌になるまでわかっていた。これまで生きてきた中でだ。
それがわかっているからこそでもあった。今の言葉はだ。
「だが。美もだ。人は求めるものだ」
「人がですか」
「だからだ。私はそれを信じている」
王は話す。青い薔薇を心の中に見ながらだ。
「人が何時か青い薔薇を生み出すことをだ」
「青い薔薇だけではありませんね」
「わかるか」
王はホルニヒの今の言葉に顔を向けた。白い道の左右に緑の文字が描かれている。その複雑だが美麗な文字の中にいてだ。王は話すのである。
「人はやがて青い薔薇を生み出し」
「そしてその他にも」
「空を飛ぶだろう」
「気球ではありませんね」
「前にも言っただろうか」
王はふと己の記憶を辿って述べた。
「私はアルプスを見たいのだ」
「空からですね」
「上からあの白と青の世界を見られたならば」
そのことを思いだ。恍惚として話すのだった。
「どれだけいいだろうか」
「陛下はアルプスがお好きですね」
「アルプスはいい」
アルプスについてもだ。王は美を見ていた。
そうしてだった。そのアルプスのことをホルニヒに話していく。
「あの場所だ」
「そのアルプスにお城を」
「あの場所が最
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