62話:摘発の始まり
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が......」
「このワルター・フォン・シェーンコップが功を焦るか......。確かにそうかもしれんな。ここまで環境を整えて、抜擢して頂いたのだ。他の誰に無能と思われても構わないが、伯にそう思われることになるのは不本意だし、楽しい想像では無いな......。確かに貴官の指摘は的を射ているやもしれん」
大胆不敵を自認する意地からだろうが、シェーンコップ卿は落ち着いた雰囲気を取り戻した態をしていた。ただ、彼が本当に困ったり、焦ったりしたときは普段は右手をあごに当てる所、左手を当てる。この癖を知っているのは私だけだろう。左手をあごに当てている彼を見て、私は少し落ち着きを取り戻せた。
「シェーンコップ少尉・メックリンガー少尉、基地司令がお呼びです。執務室へお越しください」
そんな話をしているうちに、ノックとともに基地司令付きの従卒が執務室に入室を求め、伯からの呼び出しを告げた。何か動きがあったのだろうか?シェーンコップ卿と一瞬、顔を見合わせると、基地司令官執務室へと急いだ。
ノックをして官名を名乗り、許可を待ってから入室する。揃って敬礼をすると、教本に載っているような答礼をされ、席を勧められた。
「内密の話があるので、私が声をかけるまで誰も近づけない様にしてくれ。よろしく」
リューデリッツ伯が従卒に声をかけてから、椅子に座られた。横目で見ると、シェーンコップ卿が見事な手さばきでお茶を用意していた。まず伯爵の手元へ、次に私、最後にシェーンコップ卿の手元にティーカップが置かれ、紅茶の良い香りが辺りに漂う。
「相変わらずのお手並みだね。シェーンコップ卿の入れる紅茶は美味だ。冷めないうちに楽しむとしようか?」
伯はそう言うと、ティーカップを口元に運び、香りを楽しんでから紅茶を口に含んだ。私たちも倣うようにお茶を飲む。確かにおいしいお茶だが、これは茶葉の良さだけでなく、特性を理解して入れたからこそのおいしさだ。
「うん。しっかり茶葉の銘柄に合わせた入れ方をしているね。さて、男性を焦らす趣味は無いから早速本題に入ろう。初日分の検査結果から、既に数十名の薬物反応と100件を越える検査逃れが把握されている。両名がしっかり手筈を整えてくれたおかげでもある。良くやってくれた」
伯が笑みを浮かべながら、最新情報を教えてくれた。正直、ホッとしたのは確かだ。横目で見るとシェーンコップ卿もホッとした様子を隠していなかった。
「進捗の監査は継続してこちらでも進めて欲しい。言うまでもないが、緊急だと判断したらすぐに報告を上げてくれて構わない。ただ、今夜は英気を養う余裕はあるだろう。両名とも少し羽を伸ばすと良い」
そう言うとサイドテーブルから小袋を取り出して、私たちの手元に置く。シェーンコップ卿は慣れているのか、お礼を言
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