見たいもの
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食い込ませることができたのか。その理由は」
もはやバグダッシュは言い訳の言葉もなかった。
静かに書類を下げる。
「もう一度、調査をいたします。人数を何名か送りますがよろしいでしょうか」
「君の言う杞憂であれば、問題はない。だが、見たところ杞憂ではなさそうだな」
アロンソが苦い表情を見せた。
+ + +
食卓に並ぶのは、簡素な料理だ。
元より年をとれば、油物は受け付けなくなる。
野菜をメインにして、わずかばかりの子牛のローストが並ぶ。
黙々と口に運ぶ姿に、リアナはワイングラスを手にして、小さく笑った。
「マクワイルド様は……優秀な方のようですね」
かちんと音を立てて、フォークが止まった。
ゆっくりとアロンソが、顔を動かす。
悪戯な笑みが目の前に浮かぶ様子に、だが、アロンソの反応はリアナの予想していたものとは違った。
戸惑うでもなく、ただ難しく頷いた。
「彼も昇進したのですわね。いまはどちらに」
「まだ第八艦隊の司令部だよ。近く異動するだろうが、若いからな――上層部もどこか決めかねているようだ」
「彼に後を継いでいただけると、フェアリーも安泰ですわね」
そんなリアナの言葉にも、ああと一言だけ口にして、ワイングラスをあおった。
「だが。難しいだろう」
「あら、ライナは魅力的ではないかしら」
「そうではない。いや、ライナもフェアリーも……彼にとっては目的の外なのだろう」
そんな言葉に、さすがのリアナも小さく顔をしかめた。
自分の娘や大切な会社が、つまらぬものだと言われた気がしたからだ。
「勘違いするな。彼の目は、人や一企業には向いていないと思う」
「ならば、どこに」
「わからんよ。ただの一軍人である私にはな」
アロンソは首を振って、口にしたローストを飲み込んだ。
「そう。では、今度ご本人にお聞きしますわ」
「教えてくれるとは限らないが」
「あら。人の本音を見抜くのは得意ですのよ」
「本音か……。リアナ、最近商売は」
小さく目を開いたリアナの表情に、アロンソは失礼したと謝罪。
ナプキンで口を拭った。
「いや。何でもない――目を通したい資料がある。先に失礼させてもらうよ」
「あまり根を詰めないでくださいね。最近、夜遅くなっておりますから」
「若いころに比べれば、大したことではないさ」
「もう若くはないのですから」
「そうだな。気を付けよう」
アロンソが笑い、静かに食卓を後にする。
メイドが残された食器を下げていく。
そんな様子に、リアナは追加のワインを頼む。
ゆっくりと白い液体がワイングラスに注がれる様子に、リアナは表情を消した。
細い指先が机を撫でる。
昇進して、新しい仕事で悩んでいるのか
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