暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
見たいもの
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
食い込ませることができたのか。その理由は」
 もはやバグダッシュは言い訳の言葉もなかった。
 静かに書類を下げる。
「もう一度、調査をいたします。人数を何名か送りますがよろしいでしょうか」

「君の言う杞憂であれば、問題はない。だが、見たところ杞憂ではなさそうだな」
 アロンソが苦い表情を見せた。

 + + +

 食卓に並ぶのは、簡素な料理だ。
 元より年をとれば、油物は受け付けなくなる。
 野菜をメインにして、わずかばかりの子牛のローストが並ぶ。
 黙々と口に運ぶ姿に、リアナはワイングラスを手にして、小さく笑った。

「マクワイルド様は……優秀な方のようですね」
 かちんと音を立てて、フォークが止まった。
 ゆっくりとアロンソが、顔を動かす。
 悪戯な笑みが目の前に浮かぶ様子に、だが、アロンソの反応はリアナの予想していたものとは違った。

 戸惑うでもなく、ただ難しく頷いた。
「彼も昇進したのですわね。いまはどちらに」
「まだ第八艦隊の司令部だよ。近く異動するだろうが、若いからな――上層部もどこか決めかねているようだ」
「彼に後を継いでいただけると、フェアリーも安泰ですわね」

 そんなリアナの言葉にも、ああと一言だけ口にして、ワイングラスをあおった。
「だが。難しいだろう」
「あら、ライナは魅力的ではないかしら」
「そうではない。いや、ライナもフェアリーも……彼にとっては目的の外なのだろう」
 そんな言葉に、さすがのリアナも小さく顔をしかめた。

 自分の娘や大切な会社が、つまらぬものだと言われた気がしたからだ。
「勘違いするな。彼の目は、人や一企業には向いていないと思う」
「ならば、どこに」
「わからんよ。ただの一軍人である私にはな」
 アロンソは首を振って、口にしたローストを飲み込んだ。

「そう。では、今度ご本人にお聞きしますわ」
「教えてくれるとは限らないが」
「あら。人の本音を見抜くのは得意ですのよ」
「本音か……。リアナ、最近商売は」

 小さく目を開いたリアナの表情に、アロンソは失礼したと謝罪。
 ナプキンで口を拭った。
「いや。何でもない――目を通したい資料がある。先に失礼させてもらうよ」
「あまり根を詰めないでくださいね。最近、夜遅くなっておりますから」
「若いころに比べれば、大したことではないさ」

「もう若くはないのですから」
「そうだな。気を付けよう」
 アロンソが笑い、静かに食卓を後にする。
 メイドが残された食器を下げていく。

 そんな様子に、リアナは追加のワインを頼む。
 ゆっくりと白い液体がワイングラスに注がれる様子に、リアナは表情を消した。
 細い指先が机を撫でる。
 昇進して、新しい仕事で悩んでいるのか
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ