254部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その四
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その四
「だが。私がそこに築くのはだ」
「それはどういうものですか?」
「自然の中に。それがあるのだ」
そうだとだ。王は熱を帯びた声で話した。
「それが私の実現させる美なのだ」
「ではその場所は」
「何処かわかるか?」
「御答えして宜しいでしょうか」
ホルニヒは王に対してだ。こう前置きしてから述べようとするのだった。
「そうして」
「うむ、そうしてくれ」
いいとだ。王は告げた。
「それでどうなのだ」
「はい、アルプスでしょうか」
ホルニヒが言う場所はそこだった。ドイツの南、そしてバイエルンの南にあるそこだというのだ。そこがどういった場所かというとだ。
「そこでしょうか」
「わかるか」
「陛下がお好きな場所ですから」
「自然はいい」
王は今はだ。そこにはないものを見ていた。そのうえでの言葉だった。
「全てを癒してくれる」
「だからこそそこに」
「そうだ。人の心は時として醜い」
そのことは嫌になるまでわかっていた。ワーグナーのこと、そして政治のことでだ。王は知りたくもないのにだ。そういったことを知ってしまったのだ。
だが、だ。自然はというのだ。
「しかし自然は違う」
「常に美しいというのですね」
「人のその醜さなぞ自然の美の前には何程のものでもない」
こう言う。ベルサイユにいて。
「何にもならないのだ」
「その自然の中に。陛下の美が」
「自然と同一するのだ」
そうなるというのだ。王の実現させる美は。
「そうあるべきなのだ」
「ワーグナー氏とフランスのそれぞれの美」
「そして自然の美がだ」
「ドイツにおいて実現しますか」
「そういうことだ。そしてだが」
「そして?」
「私は今はだ」
今はとだ。ここでさらに話したのだった。
「バイエルンに帰った時に一つのことをしたい」
「それは」
「ワーグナーをまたミュンヘンに呼ぶ」
彼の街にだ。呼ぶというのである。
「あの街にだ」
「それはできるのですか」
「できるようになったのだ」
微笑んでいた。顔が自然にそうなっていた。
「ようやくな」
「そうですか。そうなったのですか」
「あの戦争のことが私にそれをもたらしてくれた」
あのプロイセンとオーストリアの戦争だ。それがだというのだ。
「意固地な者達を。退けてくれた」
「ワーグナー氏を遠ざけていた方々が」
「いいことだ。私にとって」
「陛下にとって」
「私は彼に出会う運命だったのだ」
ワーグナー、そしてなのだった。
しかしだった。その運命の全てをだ。ホルニヒは感じ取れなかった。それが王だけが感じ取れるものだった。彼だけがなのだ。
「ここに来ることもだ」
「鏡の間というだけはありますね」
ホルニ
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