第四章
第43話 約束
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で、そのあとに、いや、そもそも、こいつはどんな人間なんだろうか? とも少し思ったかな。その若さで戦闘員をやっていて、いったい今までどんな人生を送ってきたのだろうと。お前って、やっぱり俺から見ると、凄く謎の人物だったから……」
うう。うまく説明できない。
「あー、なんかうまく言えないけど。とにかく俺が納得がいかなかったんだよ」
何でこんなに話すのが下手なんだろうと思う。
喋っていて自分にイライラしてくる。
濡れた髪を、両手でかきむしってしまう。
言いたいことをワープロソフトで打って、ゆっくり編集して、チェックをした上で、それを読み上げながら話したい。
「納得がいかなかったって、どういうことですか?」
聞き返される。
やっぱりわかりづらいよな……。俺本人も何を言っているのかよくわかっていないし。
「んー……何かさ、このまま終わらせたら俺は後悔するって思ったのと、お前に対しても、本当にそんな人生の終わり方をしていいのかよと思って……。ごめん、ダメだ。うまく説明ができないな……。
今はギブアップだ。頭が落ち着いたときに、もう一度説明させてください。お願いします……」
降参した。
しかし彼は、柔らかい横顔のまま、手枷が付いた両手を俺の左腿の上に乗せた。
「少し意地悪でしたね。すみません」
「え?」
「大丈夫です。リクさんの言いたいことはちゃんと伝わってますから」
そして俺の顔を見上げた。
「リクさん。今度は僕のほうから、あなたに約束してほしいことがあります」
「お前のほうから……? どんな約束?」
顔つきが少し変わり、引き締まったような感じがする。
どんな約束をしてほしいのだろう。
「僕のいた組織を攻めるにあたって、できるだけ死人が少なくなる方法でやってほしいんです。そして、僕が持っている情報をそのために使ってください。この国からすれば、僕のいた組織は敵だと思いますが、僕にとっては育ててくれた故郷でもあります。結果的に裏切ることには変わりないですが、せめて死人は少なくなるようにしたいんです」
――ああ。この締まった顔は、気持ちが固まったということだったのか。
彼は、生きて、この先にあるであろう故郷の終焉を見届ける決意をしたのだ。
ならば俺も、この少年の、せめてもの望みを叶えてあげたい。
そう思った。
「ああ、約束する。任せとけ」
「ありがとうございます。ではもう一回、指切りというのをしてください」
「わかった」
「あの犬の名前、クロさんでしたっけ」
「そうだよ」
「クロさんにまた証人になってもらってもいいですか」
「了解。クロ――」
俺が呼ぶ前に、すでにこちらに向かって歩き出していた。
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