暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第四章
第43話 約束
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
 で、そのあとに、いや、そもそも、こいつはどんな人間なんだろうか? とも少し思ったかな。その若さで戦闘員をやっていて、いったい今までどんな人生を送ってきたのだろうと。お前って、やっぱり俺から見ると、凄く謎の人物だったから……」

 うう。うまく説明できない。

「あー、なんかうまく言えないけど。とにかく俺が納得がいかなかったんだよ」

 何でこんなに話すのが下手なんだろうと思う。
 喋っていて自分にイライラしてくる。
 濡れた髪を、両手でかきむしってしまう。
 言いたいことをワープロソフトで打って、ゆっくり編集して、チェックをした上で、それを読み上げながら話したい。

「納得がいかなかったって、どういうことですか?」

 聞き返される。
 やっぱりわかりづらいよな……。俺本人も何を言っているのかよくわかっていないし。

「んー……何かさ、このまま終わらせたら俺は後悔するって思ったのと、お前に対しても、本当にそんな人生の終わり方をしていいのかよと思って……。ごめん、ダメだ。うまく説明ができないな……。
 今はギブアップだ。頭が落ち着いたときに、もう一度説明させてください。お願いします……」

 降参した。
 しかし彼は、柔らかい横顔のまま、手枷が付いた両手を俺の左腿の上に乗せた。

「少し意地悪でしたね。すみません」
「え?」
「大丈夫です。リクさんの言いたいことはちゃんと伝わってますから」

 そして俺の顔を見上げた。

「リクさん。今度は僕のほうから、あなたに約束してほしいことがあります」
「お前のほうから……? どんな約束?」

 顔つきが少し変わり、引き締まったような感じがする。
 どんな約束をしてほしいのだろう。

「僕のいた組織を攻めるにあたって、できるだけ死人が少なくなる方法でやってほしいんです。そして、僕が持っている情報をそのために使ってください。この国からすれば、僕のいた組織は敵だと思いますが、僕にとっては育ててくれた故郷でもあります。結果的に裏切ることには変わりないですが、せめて死人は少なくなるようにしたいんです」

 ――ああ。この締まった顔は、気持ちが固まったということだったのか。
 彼は、生きて、この先にあるであろう故郷の終焉を見届ける決意をしたのだ。

 ならば俺も、この少年の、せめてもの望みを叶えてあげたい。
 そう思った。

「ああ、約束する。任せとけ」
「ありがとうございます。ではもう一回、指切りというのをしてください」
「わかった」
「あの犬の名前、クロさんでしたっけ」
「そうだよ」
「クロさんにまた証人になってもらってもいいですか」
「了解。クロ――」

 俺が呼ぶ前に、すでにこちらに向かって歩き出していた。
 どんな話の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ