アインクラッド 後編
還魂の喚び声
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
差し出した。毒々しい緑に濡れた細身の短剣はわたしの左上腕を、肩口と肘の丁度中間点辺りでいとも容易く両断した。胴体から離れた左腕はすぐにポリゴンの欠片と化し、青い光を伴って消失する。その瞬間、わたしを拘束していたロープが縛り付ける対象の半分を失い僅かに緩んだ。
――いける。
一年半以上に渡って鍛え続けてきた直感が大音量で叫ぶ。緩んだロープから右腕を引き抜くと、脚に最大限の力を込め、目と鼻の先にある頭陀袋へ向けて身体ごと頭を突き出す。
「あぐっ!?」
「せ――っ、はぁっ!」
額に何か硬いものがぶつかった感触。間髪入れず目線の先にあった両脚の間を蹴り上げつつ目線を上げ、よろめき後ずさるジョニーの頭を掴み引き寄せながら、そこへ膝を叩きつける。右拳を力一杯引き絞り、へぶぅ、と変な声を上げる左頬に追撃の右ストレートを見舞う。
「やあぁぁぁぁぁっ!!」
景気良く吹っ飛ばされ壁に激突したジョニーの腹を壁に向かって踏みつけるように前蹴りを放つと、ジョニーは体をくの字に折って地面に倒れこんだ。わたしは念のため両肩を膝で押さえつけ馬乗りになって、ストレージから取り出したロープと猿轡で拘束。HPバーを見ると、さきほどのダガーに毒が塗られていたのだろう、かなりの速さで減少していたため、解毒結晶と回復結晶を贅沢に使って一気に回復。欠損していた左腕も元通りになった。
もぞもぞともがくジョニーブラックに注意しつつ装備を整えていくと、その途中で一つのアイテムに目が止まった。画面の中でそこだけが強烈な光を放っているような、予感めいた響きが脳裏を巡る。
「……行かなきゃ」
わたしはリズ作の直剣を腰にさし、ここを目指しているだろうマサキ君を探しに走った。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ