アインクラッド 後編
還魂の喚び声
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立った場所であり、唯一トラップがないことが確認されている場所でもあった。
チラリと視界の端に目を向ける。今の二連撃をまともに受けてしまったマサキは、その前の《浮舟》をいなしきれず受けた分も含め総HPの約六割に相当するダメージを受けてしまっていた。ただし、直撃を食らった《雪蛍》がそこまで威力の高いソードスキルではないということを加味すれば、この残HPはまだマシな方、という結論になるだろう。ジュンも《春嵐》の直撃によってダメージを受けてはいたが、削ることができたのは三割といったところ。ダメージレースにおいて、マサキはかなりの劣勢に立たされていた。
「どうしたんですか? この程度じゃないでしょう、『先輩方』を何人も、一瞬のうちに殺して回った《穹色の風》の実力は」
愉快そうに笑うジュンを睨みながら下唇を噛む。安い挑発に乗せられるわけではないが、エミが人質に取られている以上悠長に見つめ合ってもいられない。しかし、壁や天井を含めたそこら中にトラップが設置されていて迂闊に動くことさえできない。
「早く僕を殺さないと、《モノクロームの天使》がどうなっても知りませんよ? それに、せっかくマサキさんのために《罠設置》スキルなんて地味なスキルの熟練度上げ作業をして、時間掛けて準備したんです。もっと色々引っかかってもらわないと、骨折り損なんですよ」
アインクラッドに存在するトラップには、大別してダンジョンやフィールドに元々設置されているものと、プレイヤーがスキルを使って設置したものの二つが存在する。そして後者に関しては、設置した本人が罠から一定以上離れた場合罠自体が消滅する――設置した罠をそのままにして、他のプレイヤーが引っかかるのを避けるためだと考えられている――ため、この場の罠はジュンが設置したか、あるいは近くにもう一人、罠を設置した人物が潜んでいるかの二つが考えられたが、今の発言が真実ならばこれらは全て彼が設置したものだということになる。
しかし、ソロで活動するマサキの《罠看破》スキルはかなり高い水準にあり、アインクラッドに存在する罠の殆どは視界に入れただけで見破ることができる。そのマサキでさえ看破できないということは、《罠設置》スキル熟練度の完全習得はもちろん、派生スキルModで《罠隠蔽率増加》を選び続けなければならないが、《罠維持範囲広域化》や《同時設置上限数増加》等他の便利Modを切り捨なければならず汎用性に劣るため、一般的ではない。それゆえの油断とも言えるが、特に先ほど天井に仕込まれていたのは何者かが踏んだ場合に起動するタイプで、つまりは「天井を走る」ということを予め想定していない限り絶対に設置できない。先ほどの技後硬直を無視したとしか思えない《雪蛍》といい、一見不利とも思える大太刀といい、全てがマサキという特殊な
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