252部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その二
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その二
「私は今回の旅を支持する」
「プロイセンの宰相として」
「そうされますか」
「プロイセンの宰相としてだけでなく」
それに留まらないというのである。
「私個人としてもだ」
「そうされるのですか」
「閣下御自身としても」
「支持をされますか」
「そうだ。それを言っておこう」
はっきりとした口調でだ。彼は言い切った。
「私はあの方を支持する」
「プロイセン宰相としてだけでなく閣下御自身としても」
「支持されるのですか」
「私はあの方が好きだ」
そうだというのだった。ビスマルクがだ。
「あれだけの方がドイツにおられることは幸せだ」
「この国にとって」
「ドイツ帝国にとって」
「政治的には確かに対立する部分が多い」
それはどうしてもだった。プロイセンとバイエルンはどうしても対立してしまう。ドイツの東と西、北と南、そしてプロテスタントとカトリック。
その対立するものがだ。両国を政治的にいがみ合わせているのだ。
それがわかっていてもだ。ビスマルクは言うのだった。
「だがそれでもだ」
「あの方をお好きなのですか」
「そして支持されますか」
「そうしていく。これからもな」
今に留まらないというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
「我々はです」
彼等は官僚として話した。命令に忠実で個人的感情を見せない官僚にだ。
「宰相閣下のお言葉に従います」
「そうさせてもらいます」
「あの方が多くの者にわかるのは」
それが何時かもだ。王は話した。
「それはあの方が歴史になってからだ」
「歴史になってから」
「それからなのですか」
「そうかも知れない。私はあの方を今理解できて幸せだ」
そのことについてもだ。彼は幸福だというのだ。
「そう思う」
「あの方はこれからどうなるのか」
「それが気になりますが」
「それは今は言うべきではない」
ビスマルクにとって珍しい顔になった。それはだ。
悲しい顔だった。その気難しい顔をだ。悲しいものにさせてだ。
彼は今こう言うのだった。
「今はな」
「未来はわからない」
「だからでしょうか」
「いや、私にはだ」
わかると言おうとした。しかしだ。
その言葉を言わなかった。未来を言ってしまえばそれが今すぐになってしまうのではないかと思えたからだ。それで言わないのだった。
「何でもない」
「左様ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、とにかく私はあの方の今回の旅を支持する」
それは変わらないというのだ。
「わかったな」
「わかりました」
こうしてだった。ビスマルクは王の旅を暴漢するどころか擁護さえするのだった。それはバイエルンにも伝わりだ。高官達も表立って言えなくな
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